日本に古くから存在する「神道」は、信仰している方も非常に多い宗教です。
ここではこの「神道」を取り上げて、
・神道とは何か
・神道式の葬儀での持ち物
・神道式の葬儀でのお参りの方法
・神道式の葬儀で気を付けるべきこと
を解説していきます。
神道とは、宗教の種類の一種です。
自然発生的に興った宗教であるとされていて、「八百万の神々」「万物に神が宿る」という価値観を持ちます。
仏教やキリスト教とは異なり、いわゆる「開祖」にあたる人物が存在しない宗教であるのも非常に大きな特徴です。
なお、日本ではかつて仏教と神道は一体化して存在していました。これは「神仏混淆(しんぶつこんこう)」あるいは「神仏習合(しんぶつしゅうごう)」と呼ばれるものです。この2つは明治時代に出された「神仏分離(しんぶつぶんり)」によって分けられましたが、現在でも仏教と神道では似たような価値観・似たような宗教的儀式がみられる部分もあります。
神道の葬儀は、「神道式の葬儀」あるいは「神式の葬儀」「神葬式」と呼ばれます(ここでは「神道式の葬儀」の表記に統一します)。
ここからは、神道式の葬儀のマナーについて解説していきます。
神道式の葬儀では、数珠は用いません。
数珠は仏教のときに使うものですから、神道ではこちらは使用しません。
ただ、「相手の宗教が何かわからない」ということもあるでしょう。その場合は数珠を鞄の中に忍ばせていき、仏式ならば出す、神道式ならば出さない、というようにその場で判断しましょう。
それ以外の持ち物は、仏式のときと同じです。ただ、不祝儀袋は異なります。
【不祝儀袋 表書き】
神道式の葬儀の場合・・・・「御玉串料」「御榊料」「御神前」
仏教の葬儀の場合・・・・・「御香典」
キリスト教の場合・・・・・「御ミサ料」「御花料」
尚、神道式の場合はハスの花やユリの花、十字架が入ったものは使えません。ハスの花は仏教の花ですし、ユリの花や十字架の入った不祝儀袋はキリスト教の葬儀のときに使うものです。神式では、これらの模様の入っていないものを選びます。
水引に関しては地域差もありますが、基本的には黒白あるいは双銀のものを選ぶようにすればよいでしょう。
これは神道式に限った話ではありませんが、迷った場合は
・黒白あるいは双銀の結び切りの水引のもの
・柄が入っていない不祝儀袋で
・「御霊前」の表書き
にすると間違いがありません。このような不祝儀袋は、仏教でもキリスト教でも神道式でも、どの宗教でも使用できます。なお厳密に言えば「御霊前」は仏教の一部の宗派ではNGとされる表記ではありますが、一般参列者として参加する場合は問題視されることはありません。
※なお、私たちは非常によく「香典袋」という呼び方をとりますが、これも厳密に言えば仏教のときに使う不祝儀袋を指す言葉です。そのためここでは「不祝儀袋」とします。
神道式は、以下の流れを取ります。
【通夜】
1.通夜の開始~神職入場
神職が入場し、通夜が始まります。お祓いの儀式が行われます。
2..遷霊祭の開始
「遷霊祭(せんれいさい)」は、故人様の魂を霊璽(れいじ、位牌)に移すための儀式です。この儀式は、「御霊移しの儀(みたまうつしのぎ)」とも呼ばれます。
3.お供えをする
「献饌の儀(けんせんのぎ)」が行われます。これはお酒などを神前に捧げる儀式をいいます。この儀式は神職が行います。
4.玉串奉奠
参列者による玉串奉奠(たまぐしほうてん、後述します)が行われます。
5.お供え物を下げる
「撤饌の儀(てっせんのぎ)」が行われます。これは、3でお供えしたものを下げる儀式です。
6.神職退場~通夜の終了
全員で立ち上がり礼をし、神職が退場します。神職の退場後解散となりますが、その前に挨拶や案内が行われる場合もあります。
【葬儀・告別式】
1.葬儀・告別式の開始~神職入場
神職が入場し、葬儀・告別式が始まります。このときも、通夜と同じようにお祓いが行われます。
2.お供えをする
ここでも献饌の儀が行われます。
3.祭詞を述べる
喪主などによって祭詞が述べられます。この祭詞の中身は、故人様の遺した功績などで構成されています。
4.玉串奉奠
玉串奉奠を行います。
5.お供え物を下げる
献饌の儀でお供えしたものを下げます。これも、通夜と同じです。
6.神職退場~弔電読み上げ
ここまでで宗教的儀式は一通り終わります。この後に、弔電の読み上げが行われます。
7.花入れ
棺の中にお花を入れていきます。火葬場に同行する人以外は、ここが最後のお別れとなります。
8.喪主挨拶~葬儀・告別式終了~出棺
喪主による挨拶が終われば、葬儀・告別式も終了です。この後出棺となります。
火葬場に行く人はマイクロバスや霊柩車、あるいは自家用車に乗り込みます。それ以外の方は玄関先で出棺を見送ります。
ここまで神道式の葬儀の流れについて見ていきましたが、参列者として参加した場合は基本的には会場内のアナウンスに従えばそれほど戸惑うことはないでしょう。
ただ、玉串奉奠のやり方は覚えておきたいものです。
玉串奉奠は仏教における「焼香」にあたるもので、神前に榊をお供えするものです。
これは以下の手順で行います。
1.祭壇の前に歩みを進め、まずはご遺族に一礼する
2.スタッフから榊を受け取る。このとき、茎の方は右手で、葉の方は左手で持つ。右手は上から、左手は下から持つ
3.祭壇の前に行き、軽く一礼をする
4.右に回転させて、茎を自分の方に向ける
5.その後さらに右に回し、祭壇側に茎を向ける
6.祭壇に向かって玉串を置き、二礼二拍手一礼を行う。なおこのときの拍手は、音を立てない(忍び手)
7.ご遺族・神職に一礼をする
8.席に戻る
もっとも、この玉串奉奠も「自分の前の人」を真似すれば問題ありません。玉串奉奠や焼香は、参列者より先にご遺族が行いますから、そのご遺族のやり方を見習えば失敗はしないでしょう。
最後に、神道式の葬儀で気を付けるべきことを「言葉」の面から解説していきます。
「またまた」「再度」などのように「重ね言葉」を嫌うのは、神道式でも仏教式の葬儀でも同じです。また、当然のことではありますが、故人様の死因などを詮索することも慎みましょう。
このあたりはすべての葬儀に共通することなのですが、「仏教の葬儀のときではよく使われる言葉なのに、神道のときには使わない言葉もある」という点には注意が必要です。
その代表例が「冥福を祈る」という表現です。
神道の場合は、亡くなった人は神様となって子孫を見守ると考えます。そのため、「冥福」という価値観を持ちません。
神式の場合は、「故人様が安らかならんことを」「御霊が静かな眠りにつかれますことをお祈りします」などのような言い回しを取るのが望ましいといえるでしょう。
いかがでしたでしょうか。
神道の葬儀は仏教の葬儀と共通する部分もありますが、玉串奉奠や言葉の使い方などには違いがみられます。
葬儀において何よりも大切なのは故人様とご遺族を思いやるという姿勢ですが、それをきちんと示すためにも、事前に「神道式ならではのマナー」も押さえておきたいものですね。