通夜や葬儀では様々なマナーがあります。 しかし、喪主となる機会は極めて少ないため、香典返しに関する知識やマナーを知る人はあまりいらっしゃらないのではないでしょうか。 特に香典をいただいた方や参列していただいた方には、適切な品物を選び、タイミング、お返しの方法などマナーに気を付け対応したいものです。 この記事では、香典返しについて一般的な知識として知っていただくことで、通夜や葬儀などで失礼のないよう、マナーを中心に紹介します。 なかなか経験することがない香典返しですが、社会人として知っておきたい知識ですので、ぜひご一読ください。
香典返しとは
香典には、大切な家族や親族が亡くなった遺族を励ますという気持ちが込められています。 昔は、お香やお花を持参し故人様の供養を親戚や知人が集まり執り行っていましたが、現在ではお香、お花に代わりに故人様へお供えする金品を香典といい、葬儀などで遺族に渡すようになりました。 そして香典返しには、香典に対する御礼という意味合いだけでなく、「弔事が無事に終わった」という報告を参列者の方に報告する意味合いも含まれています。
香典返しの相場
香典返しは、香典を受け取った方すべての人にお渡しします。 ここでは、香典返しの金額の相場について解説します。
一般的な香典返しの相場
一般的な相場は、受け取った香典の3分の1または2分の1で「3分の1返し」「2分の1返し」といわれます。 昔は、関東は2分の1返し、関西では3分の1返しと地域により異なっていましたが、現在は香典返しの地域性は薄まり、2分の1返し(半返し)が主流になっています。
高額な香典の香典返し
一般的に、2万円以上の香典は、高額な香典といわれています。 高額な香典は故人様やご遺族に対してのお気持ちが含まれていることもあり、必ず半返しが必要なわけではありません。 親族からの高額な香典をいただいた場合は、ご厚意に甘え、ささやかなお礼の品でも遺族の気持ちは伝わるでしょう。 しかし、故人様の会社関係やご友人、知人といった個人的な香典返しは、次のように考えましょう。 ♦会社関係 慶弔規定がある場合は会社からの香典に対する香典返しは、基本、必要ありません。 会社の担当者へ確認をしておきましょう。 ただし、お忙しい中足を運んでくださった御礼という意味からも、菓子折りなどをお渡しし、遺族の気持ちを伝えると良いでしょう。 ♦友人、知人といった個人 他の弔問客より少し高価な返礼品を用意しましょう。 当日返しの場合は、通夜や葬儀当日の香典返しに加え、四十九日法要明けに改めて香典返しとして、 品物を贈るようにしましょう。
香典返しの選び方
香典返しの品物には、ふさわしい物とふさわしくない物があります。 贈る側の気持ちとして、相手に喜ばれる品物を選びたいものですが、実はなんでも良いというわけではないのです。 ここでは、一般的にふさわしい物とふさわしくない物、また迷った時はどうすれば良いのかなど紹介します。
香典返しにふさわしい品物
香典返しは不祝儀を後に残さないという考えから、「後に残らないもの」を選ぶことが好ましいとされています。 では、ふさわしい品物とはどのような物でしょうか。 ここでは、香典返しにふさわしい品物について紹介します。
♦消えものを選ぶ 不幸を後に残さない意味合いから、消えてなくなるものを選びましょう。 お茶、コーヒーなどの飲み物や海苔などの食べ物が定番です。 石鹸や入浴剤、洗剤も不幸を洗い出すという意味合いで選ばれています。 ♦白物を選ぶ 白装束をお召しになり故人様があの世へ旅立つという意味が込められており、食材では砂糖、消耗品では白いタオルやシーツが選ばれています。 ♦陶磁器や漆器を選ぶ 陶磁器は亡くなって土に帰る、漆器は不幸を塗りつぶすという意味合いから、日常で使えるものとして、陶磁器や漆器も選ばれています。
ふさわしくない品物
後に残らないものでも、ふさわしくない品物があります。 昔から、肉類や魚類は「四つ足生臭もの」として避けられていますが、嗜好品である酒類や 慶事に使われるかつお節や昆布もふさわしくありません。 また、金額が分かる商品券なども避けた方が無難でしょう。
迷った時は
香典返しに迷った時は、カタログギフトがおすすめです。 香典返しにタブーとされる品物を避けると、受け取る相手に必要のない品物を選ぶ可能性もあります。 ご家庭によっては、品物によっては、買い置きやもらい物などと重なり、持て余すことも考えられます。 また賞味期限がある食材を避けたい、高額な香典返しで商品選びに迷っている方もいるでしょう。 カタログギフトは、贈られた方が自由に納得のいく商品を選べるため喜ばれるようです。
香典返しを渡すタイミング
一般的には、四十九日の法要が無事に終わったという報告を兼ねてお渡しするのが通例でした。 しかし、最近では通夜や葬儀当日の香典返しが増えています。
当日返し
通夜や葬儀の当日に、贈られた香典に対するお礼として、香典返しをお渡しするのが、「当日返し」です。 ただし、香典が高額の場合は、当日返しの品物以外に、忌明け後に改めて香典返しをお渡しするとマナー違反にならないでしょう。
後返し
忌明けの四十九日の法要後に、法要が無事に終わったという報告を兼ねて、挨拶状とともに香典返しをお渡しするのが「後返し」です。 忌明けの時期は、宗派により異なるため、事前に確認しておきましょう。
会葬御礼との違い
会葬御礼と香典返しは、返礼品をお渡しすることに違いはありませんが、渡し方や費用、挨拶状の内容に違いがあります。 具体的な内容については、次の3つです。
意味に違いがある
お渡しする意味に違いがあります。 会葬御礼は、通夜や葬儀に参列していただいた方にお渡しする返礼品ですが、香典返しは、通夜、葬儀に参列しなくとも、香典をいただいたすべての方へ返礼品をお渡しします。
返礼品に違いがある
会葬御礼は、通夜や葬儀当日にお渡しする返礼品のため、持ち帰りに不便でない品物として、お清め塩とともに、タオルやハンカチ、お茶、海苔をセットにした商品が一般的です。 香典返しは、香典の金額の3分の1または2分の1相当金額の商品を選び、当日返しまたは後日返しする返礼品です。
挨拶状の内容に違いがある
会葬御礼と香典返しのお礼を別々に記して、お渡しするため、挨拶状の内容に違いがあります。 会葬御礼の挨拶状は、通夜や葬儀に参列したすべての方へのお礼を記していますが、葬儀に参列はせず香典のみ頂いた方には、香典返しの挨拶状として別に用意する必要があります。 注意しておきたいのは、通夜や葬儀に参列していない方に、会葬御礼状をお渡ししないよう配慮が必要です。
まとめ
喪主になると、大切な方を亡くした悲しみの中で葬儀会社との打合せなどで時間を割かれ、基本的な礼儀やマナーにまで意識を向ける余裕はあまりないかもしれません。 しかし通夜や葬儀、火葬を滞りなく執り行ったとしても、参列していただいた方や香典をいただいた方に失礼があれば、故人様を無事に送り出せたとは言い難いでしょう。 香典返しはお礼の気持ちだけでなく、無事に四十九日の法要を終えた報告も兼ねているため、マナーを守り、正しい方法で感謝の気持ちを伝えられるといいですね。