葬儀とは、故人様の葬送のために行われる宗教的な儀式です。 そうした葬儀の場で、いわば主役となるのが「祭壇」です。祭壇とは、故人様に祈りや供え物を捧げて供養するために設けられます。しかし、葬儀の際以外にも祭壇は多くの場所で使われています。 祭壇の果たす役割や意味合いについては意外と知らない方が多いのではないでしょうか。 そこで今回は、葬儀で設けられる「祭壇」にフォーカスを当て、葬儀会場の正面に設けられる祭壇の持つ役割や、金額の相場などを解説していきます。祭壇の種類や供え物についても解説しますので、葬儀後に自宅にも作る祭壇の意味合いを今一度学んでみてください。
祭壇とは?
祭壇とは、「神や精霊・死者といった存在に対して供物を捧げ、祀り上げるためのもの」です。 祭壇はこの目的に沿って、様々な祭礼儀礼において用いられますが、葬儀においては「故人様の供養のために設けられるもの」ということになります。 祭壇は、日本では特に葬儀において強く印象に残るものであり、故人様の棺を祭壇に置き、遺影を中心に多くの花で彩られるイメージが強いでしょう。 西洋においてはキリスト教、特にローマカトリックの教会にある祭壇が日本でもよく知られていて、結婚式をキリスト教式で行うことが多い日本では、祝祭のイメージもあるかもしれません。
祭壇の役割とは
葬儀において祭壇が設けられるのは、先述の通り故人様を偲び供物を捧げ供養するという目的があるからです。 祭壇は、その目的を果たすために、いわば故人様本人の象徴としての役割を担います。 読経やミサといった儀礼、線香や抹香焼香などの拝礼を行うにあたって、遺族や参列者・聖職者は、祭壇を通して故人様へ祈りを捧げます。そして、この世での故人様との最後のお別れを、葬送儀礼として粛々と行うのです。 祭壇は、このように葬儀においても主要な役割を果たすものですが、必ずしも葬儀に用いられるものだけではありません。祭壇は元々神様や精霊のような超常的存在を祀り上げるためのものですから、葬儀をはじめとする様々な祭礼・儀礼全般において設けられます。
祭壇の種類
前述の通り様々な祭礼・儀礼において用いられる祭壇ですが、祭壇には儀式の目的や信仰対象に応じて色々な種類があります。 日本でよく知られているのは、仏教・神道・キリスト教における祭壇です。 仏教の葬儀では・・・故人様の棺や遺影を沢山の花と共に飾る「白木祭壇(仏式祭壇)」 神道の葬儀では・・・三種の神器と共に故人様の遺影や酒等の供物と共に捧げる神棚に似た「神式祭壇」 キリスト教の葬儀では・・・生花・蝋燭と十字架と共に棺や遺影を飾る「生花祭壇」 また、葬儀だけでなく、葬儀の後、故人様の遺族が家庭内で故人様を偲び、いつまでも見守ってもらえるよう祈りを捧げるために家の中に置く小さな祭壇もよく用いられています。 あまり「祭壇」というイメージはないかもしれませんが、日本の家庭には古くから置かれているであろう「仏壇」や「神棚」、そしてキリスト教徒の家庭に置かれている「家庭用祭壇」も、広義には祭壇の一種です。 なお、仏式の場合は、葬儀後、四十九日までの間に故人様の遺骨・位牌を飾るための祭壇を家の中に置く習慣があります。これを「後飾り祭壇」もしくは「中陰壇(ちゅういんだん)」といい、これも祭壇に含まれます。
後飾り祭壇については以下の記事も参照ください。
おくりびとのコラム
後飾りはどう処分すればいいの?
祭壇に供えるもの
祭壇は、神様や精霊、あるいは故人様を供養するためのものですから、供養の意味を込めて「祭壇に供え物をする」ことが大切になります。 祭壇を設けてお祈りする対象も、宗教や状況によって異なりますが、ここでは主に葬儀やその後に祭壇に供えるものを紹介しましょう。
仏教の祭壇に供えるもの
仏教の場合、お供え物に関して明確に決まっていて、「五供(ごく・ごくう)」と呼ばれる5種類のお供え物が、祭壇に供えるものの基本とされています。 内訳としては以下の通りです。 「香」・・・線香や抹香を指します。香を焚くことでお供えした人の心身が清められるともいわれています。 後飾り祭壇では、香を絶やさずに炊くものとされています。 「花」・・・花を指し、供花(くげ)ともいいます。花を通してお供えした人と仏様を向き合わせ、気持ちが落ち着くという意味があるとされています。 「灯明」・・・主にろうそくの火を指し、後飾り祭壇では、四十九日の忌明けまで毎日ろうそくの火を灯すとされています。 「飲食(おんじき)」・・・食べ物・飲み物を指します。基本は遺族が食べるものと同じものを膳として供えますが、炊き立てのご飯やお茶を供えるのが一般的です。殺生につながる肉や魚、ニンニクなど匂いのきついものはNGとされていますが、故人様が好きだったものであれば供えてもいい、という考え方もあります。 「水(浄水)」・・・水を指します。故人様は成仏の前には喉が渇いているという考え方があることから、喉を潤す意味で水が用意されます。水の代わりにお茶をお供えする場合もあるようです。 その他、仏教の祭壇にはお菓子(落雁など)や果物、お菓子・缶詰などをお供えすることがあります。
神道の祭壇に供えるもの
神道では、供え物を「神饌(しんせん)」と呼び、主に食べ物を供える習慣があります。 米・酒・餅のほか、仏教ではNGとされている魚や鳥などを供えても構いません。野菜や塩、水、お菓子なども供えます。
キリスト教の祭壇に供えるもの
実はキリスト教では、お供え物をするという習慣がありません。 その代わり、特に葬儀の際には、お花(生花)を贈る習慣があります。そのため、仏教でいう「香典」にあたるものとして、参列者が「お花料」を包むのが一般的です。
供花については以下の記事も参照ください。
おくりびとのコラム
【葬儀のお花】供花についてマナーや注意点などをわかりやすく解説
祭壇にかかる金額は?
それでは、祭壇にはどのくらいの金額がかかるものなのでしょうか。 祭壇の料金には、台や飾りの他、花の値段も含まれています。生花祭壇の場合、祭壇に供える花の手配の相場は約20万円~となりますが、故人様に合ったオリジナルの花を手配する場合にはもっと高い相場になります。 様々な花を組み合わせて大規模な祭壇を作る場合には、花の手配で30万円から60万円ほどかかる場合もあります。
まとめ
以上、葬儀で用意される祭壇についてもっと詳しく知っていただくために、祭壇の持つ役割や祭壇の種類、金額の相場などを解説しました。 祭壇の主な役割である「供養」は宗教的な意味合いが強いものですから、それぞれの宗教によって祭壇のデザインや使い方、供えるものなどが変わります。 故人様の信心を尊重し、故人様が生前信仰していた宗教の慣習に沿った祭壇を用意しましょう。