葬式に欠かせない「香典」。 昔は供え物などを持ち寄る形式でしたが、設備の整ったセレモニーホールや斎場での葬儀が増え、葬儀費用が高額となるなど時代の変化に伴い、現在の「金銭を包む」香典に変化しました。 現在では金銭でお悔やみの気持ちや哀悼の意を示す香典ですが、明確な基準はないため、いくら包めばいいのかわからない方も多いでしょう。 そこで今回は、香典として包む費用の大体の相場や、最低限いくらぐらい包めばいいものなのかを解説します。 また、併せて香典袋の包み方や表書きの書き方、マナー等も併せて解説しますので、この記事1つで香典に必要な知識をまとめて学んでいきましょう。
香典の相場は?
気になる香典の金額ですが、結論から申し上げますと「明確な基準はない」と言えます。本来、香典とは故人様へのお供え物の代わりとして包み納めるものなので、金額の明確な規定はなく、いわば「お気持ち」を示すようなものだからです。 かといって、少なすぎても申し訳ない気持ちになるでしょうし、高すぎても懐が痛いものです。明確な基準はなくとも、香典の「一般的な相場」はある程度決まっています。香典の相場は故人様との関係性(血縁等)が深いほど高額になりますが、大体の相場は以下の通りです。
◆親族や知人など
♦自分の親…5万円~10万円(※1) ♦自分の兄弟姉妹…3万円~5万円(※1) ♦自分の祖父母…1万円~3万円(※1) ♦義父母(配偶者の親など)…5万円~10万円(※1) ♦義兄弟姉妹(配偶者の兄弟姉妹)…3万円~5万円(※1) ♦義祖父母(配偶者の祖父母)…1万円~3万円(※1) (※1 直接の親族の場合、香典を受け取る喪主の場合や、家族との関係性や状況によって、香典は出さない場合もある) ♦叔父母等近しい親戚…1万円~2万円 ♦遠縁の親戚…5,000円~1万円 ♦友人知人…3,000円~1万円 ♦友人知人の親族(親など)…3,000円~1万円
◆仕事や会社関係
♦自分の上司…5,000円~1万円 ♦自分の上司の家族…5,000円 ♦自分の元上司…5,000円 ♦同僚…5,000円 ♦同僚の家族…3,000円
香典は最低いくらぐらい包めばいいの?
先程も説明した通り、香典として包む金額に明確な基準や規定・ルールはありません。 先程の章で挙げた一般的な相場に従えば、自分の親族や身内の場合は最低でも1万円~3万円_ほどは包むのが一般的で、他人であれば最低でも3,000円は包む、といった結論になります。 しかし、そもそも香典というのは必ずしも「出さなければならないもの」ではありません。たとえば直接の親族であっても、自らが失業中や求職中といった経済的に厳しい状況であれば、無理して香典を出す必要はないのです。 古くは近所一同で葬儀を行っており、かつては葬儀に必要なお供え物や物品を参列者が持ち寄る習慣があって、香典もそれを意味していました。 ルーツを辿ればこのように「相互に助け合う」という意図のもとに納めていたものだからこそ、無理してでも出さなければならないというものでもありませんし、香典に決まった金額はないのです。
香典の書き方・包み方・渡し方
金額についてはこのように、相場に応じて自分が出せる範囲で香典を出せばよいということがわかりました。香典として包む金額にルールはありませんが、香典には所定の書き方・包み方があります。これはしっかりと守るようにしましょう。
◆香典の包み方
香典は、香典袋(不祝儀袋)に包んで持参します。 香典袋は市販のものでも大丈夫ですし、むしろ市販のものであればマナーを詳しく知らなくてもマナーに沿った包み方が簡単にできるので、強いこだわりがなければ市販のものを用いることをおすすめします。 なお、香典袋は裸で持参するのではなく、「袱紗(ふくさ)」と呼ばれる専用の布、もしくは地味な色の風呂敷に包んで持参しましょう。 香典はまず、香典袋に包む前に「中袋(内袋)」と呼ばれる無地の封筒にお札を入れます。氏名や金額を書き添えた中袋にお札を入れて中袋を閉じ、「表袋(外包み)」で包みます。 表袋は、水引と呼ばれる飾り紐をつけ、中袋を覆うように折りたたんで包む、といったように使います。香典袋の場合の水引は、弔意を示すため、色は白黒で結び切りのものを使用します。 香典袋を包む袱紗は、市販されている略式の「金封袱紗」でも構いません。
◆香典の書き方
香典を出す際には、表袋に香典であることを示す「表書き」と、自分の「氏名」を書いて渡します。香典袋に文字を書く際には、悲しみを示す意味で「薄墨」で書くのがマナーです。 近年では不祝儀専用の薄墨の入った筆ペンも一般的に売られているので、筆ペンを使って書くのもいいでしょう。 氏名は表袋の方にも書きますが、中袋の方にも氏名・住所・金額を記載しましょう。ご遺族が香典を整理する際に中袋に何も書かれていないと、誰からの香典かわからなくなってしまうことがあるからです。 中袋の表に金額を(例:金壱萬円也)、裏に住所氏名を書くと分かりやすくなります。 表書きは故人様の信仰する宗教や宗派によって異なるので注意が必要です。 たとえば仏教の場合は「御霊前」「御仏前(御佛前)」「御香典」「御悔」等を書きます。 なお、四十九日の忌明けまでは「御霊前」、忌明け以降は「御仏前」というように、明確な使い分けをする場合もあります。神道の場合は「御榊料」「玉串料」、キリスト教の場合は「御花料」と書きましょう。 なお、蓮の花が描かれた香典袋は仏教専用のものとなるので、神道やキリスト教の葬儀の場ではふさわしくありません。 仏教式の葬儀以外の場合は、袋のデザインにも注意しましょう。キリスト教式の場合は十字架が描かれたデザインのものであれば尚良いです。
◆香典の渡し方
香典は、一般的には受付を済ませた後、袱紗から香典袋を取り出して渡します。香典は、袱紗から取り出したら、香典袋の表書きが相手から読める方向に向きを変え、必ず両手で渡します。香典袋を渡すとき、通常の袱紗の場合は受付台に置き、金封袱紗の場合は香典袋の下に敷くようにしましょう。
香典マナーについては以下の記事もご参照ください。
おくりびとのコラム
【香典マナー】香典の書き方・渡し方マナーや金額相場を詳しく紹介!
葬儀におけるお金のマナー
葬儀は、様々な冠婚葬祭の儀礼の中でもひときわ厳粛な場ですから、「忌み言葉」などの「禁忌(タブー)」には特に注意しなければなりません。 香典の金額には決まったルールはないと書きました。しかし、お札の枚数やお金の入れ方にはマナーやタブーがあります。 まずよく言われるのは「お札の枚数は奇数(1・3・5など)」というマナーです。これは偶数(2・4・6など)が「割り切れる」=「縁の切れ目を思わせる」といった理由で避けられてきたことが発端です。 たとえば1万円を包む時には、偶数である5千円札2枚ではなく、奇数である1万円札1枚にしましょう。これは、ご遺族に対する気遣いとして、金額をわかりやすくするという意味合いもあります。 また、香典に新札を用いるのは「葬儀を見越して用意していた」と思われるため、タブーです。 とはいえ、くしゃくしゃのお札で包むのもそれはそれで問題ですから、できる限り綺麗な、それでいて新札でないお札を包むようにしましょう。新札しかない場合は、折り目をつけておくのがおすすめです。 お札の入れ方に関しては、「裏向きに入れる」のがマナーとなります。中袋を開いたとき、お札に印刷された人物の顔が見えない方が裏向きとなりますので、覚えておきましょう。
まとめ
以上、葬儀に持参する「香典」について、香典の金額の相場や、どのくらい包めばよいのかといったこと、香典の包み方やマナー・タブーについて網羅的に解説しました。 香典に決まった金額はなく、出すか出さないかも自由ではありますが、金銭的に余裕がないなど余程の場合を除き、香典はなるべく包むようにした方がいいでしょう。 ただ、包まなかったからといって怒られるものでもありませんから、故人様との関係性や状況を考慮して決めるようにしましょう。 なお、香典の金額に決まりはないものの、香典の金額以外には様々なマナーやタブーがあります。 香典の包み方、表書きの書き方のみならず、香典の渡し方にも気を配り、タブーを犯さないように知識をつけておきましょう。