葬儀のかたちは時代とともに徐々に変化していっています。 そしてそのなかで、「身内だけで行う葬儀」も選ばれるようになりました。
身内だけで葬儀はできる?
「身内」という表現には、明確な決まりはありません。一般的に「血のつながった親族」と解釈されることが多い単語ではありますが、とても仲の良い友人なども「身内」と呼ぶことがあるからです。そのため、この言葉の線引きは人によって大きく異なるものだといえるでしょう。 ただこちらでは、この「身内」という言葉を「仲の良かった親族や友人」という意味で使っていくことにします。 そしてこのように定義づければ、「身内だけで葬儀を行うことは可能である」といえます。この「身内だけで行う葬儀」は、現在では「家族葬」と呼ばれています。 家族葬とは、故人様やご遺族にとって仲の良かった友人や親族だけを呼んで行う葬儀のことです。一般的な葬儀の場合は訃報を広く出し、町内会の人や会社関係の人なども受け入れて行いますが、家族葬の場合はご遺族が声を掛けた人しか参列しません。そのため、葬儀の規模は一般葬に比べて小さくなりやすい傾向にあります。
身内だけで葬儀をするには
身内だけで葬儀を行う場合は、新聞のおくやみ欄への掲載は行わないようにします。 忌引きをとる関係上、職場や学校に対して完全に秘密にしておくことは難しいかと思われますが、その場合でも「家族葬ですので……」とし、葬儀を行う日時や場所などは伝えないようにします。 なお、この場合は「参列してほしい人」には、ご家族が直接声を掛ける必要があります。基本的には電話(葬儀の電話に関しては、真夜中などに架けてもよいとされています)で伝えますが、現在はLINEやメールなどで伝えてもマナー違反とまでは言えないと考えられています。
身内だけの葬儀のメリット・デメリット
身内だけで葬儀を行うことには、いくつかのメリットとデメリットがあります。 【メリット】 1.気心が知れた仲間だけでゆっくりとお別れができる 2.葬儀の費用が抑えられる 3.時間がかからない 4.感染症対策になる 【デメリット】 1.呼ばれていない人から不満が出ることもある 2.親族などから理解が得られないこともある 3.後日の対応が大変になることもある ひとつずつみていきましょう。
【メリット】
1.気心が知れた仲間だけでゆっくりとお別れができる 葬儀は、非常にあわただしく、やらなければならないことが多いものです。大勢の人が来る葬儀であれば、さらにその手間は増えます。また弔問に来てくれた人たちに対応しなければならず、故人様とのお別れの時間を十分にとることが難しくなる場合もあります。 しかし身内だけでの葬儀ならば、決めることもそれほど多くありません。気を許せる仲間とともに、故人様との最後の時間をゆっくりと過ごすことができます。 2.葬儀の費用が抑えられる 葬儀は、規模が大きければ大きいほどお金がかかります。広いホールを確保しなければなりませんし、関わるスタッフの数も多くなります。人が増えれば飲食費用もより多くかかることになるでしょう。 身内だけでの葬儀の場合は、ほかの弔問客も招いて行う一般葬よりも規模は小さくなります。そのため、葬儀にかかる費用は大きく抑えられます。特に直葬(火葬場でお別れをするかたち)にすれば、費用は最小限になります。 3.時間がかからない 人が増えれば増えるほど、焼香(玉串奉奠・献花)にかかる時間は長くなります。また受付にかかる時間も長くなりますし、通夜振る舞いも長くなりやすいといえます。 ただ、身内だけでの葬儀の場合は、参加する人が少ないため、一般葬に比べてスピーディーに進みます。また、一日葬や直葬を選んだり、精進落としをカットしたりすることもできるようになります。そのため、時間的な負担も軽減できるのです。 4.感染症対策になる 感染症対策として大勢の人たちとあまり接触せず、密を避けることが求められます。 身内だけでの葬儀の場合は集まる人の数も少ないため、大勢の人との接触を避けられることになります。 また、会食をせずにお弁当を持ち帰ってもらうスタイルにすると、さらに感染リスクを下げられるでしょう。
【デメリット】
1.呼ばれていない人から不満が出ることもある 身内だけでの葬儀をしようとする人がもっとも頭を悩ますことになるのは、「だれを呼んで、だれを呼ばないでいるか」でしょう。 「Aさんには声を掛けたがBさんには声を掛けなかった。後で、Bさんが文句を言っていたことを知った」などのように、「葬儀の後の人間関係」にまで影響を及ぼしかねないのが、身内だけでの葬儀を行うことの難しさでしょう。 2.親族などから理解が得られないこともある 現在は身内だけでの葬儀も一般的な選択肢になってきたとはいえ、それでも、「最後くらいは大勢の人で見送りたい」と考える人もいます。 このような人が身内にいた場合、説得できるかどうかが問題になってきます。 ただ説得無しで家族葬を強行してしまうと人間関係が悪化してしまうため、できるだけ理解を得られるように丁寧に話をしましょう。 3.後日の対応が大変になることも また、後で弔問に訪れる人の対応を個別に行わなければならないことも覚えておきましょう。 身内だけの葬儀の場合、声を掛けられなかった人は葬儀に参列することはできません。そのため、葬儀の後に個別に家にお参りに来たいと希望する人が出てくる可能性もあります。これは非常にありがたいことではありますが、葬儀のときとは異なり、毎回お一人おひとりに対応する必要があります。そのため、スケジュール調整がシビアになったり、個別に返礼品を用意したりしなければならなくなることもあります。
家族葬についてこちらもご覧ください。
おくりびとのコラム
【家族葬のマナー】親族、参列者がそれぞれ抑えるべきポイント
身内だけの葬儀の注意点
上記では「身内だけでの葬儀は、葬儀の費用が抑えられる」としました。 ただ、身内だけでの葬儀の場合は、葬儀の費用が抑えられはするものの、入ってくる不祝儀も少なくなる傾向にあります。相互扶助の精神から出されるこの不祝儀が少なくなることで、「葬儀の費用はたしかに抑えられたが、不祝儀も入ってこなかったので結果的に持ち出しが多くなった」という状況に陥ることもあります。
まとめ
身内だけの葬儀を行うことは可能ですが、その選択肢にはメリットもデメリットもあります。 後悔のない葬儀にするためには、そのメリットとデメリットを知ったうえでより良い選択肢を選ぶことが重要です。