弔意を伝える方法は数多くあり、そしてその方法のなかに「弔電」があります。 昔から広く使われてきた弔電は、メールやSNSが発達した今でも、その価値を失うことはありません。 今回はこの「弔電」に注目して、その基礎知識を紹介していきます。
弔電とは
「電報」の歴史が始まったのは、今から約150年ほど前のことです。 1870年より以前は、一般的な通信方法といえば「手紙」が主流でした。やり取りをするのに非常に時間のかかる手紙は、一刻も早く訃報を告げたいときには(当時の人がそう感じていたかどうかはともかく)じれったいものだったことでしょう。 そんななかで生まれた「電報」は、非常に画期的なものでした。誕生したばかりのころは、「依頼を受けた局員が通信文を手書きして、封筒に入れて配達する」というものであり、東京~横浜間しか対応していませんでした。しかし電信機で送れるこの電報は、従来の手紙よりもはるかに速く、これを求める人の元に届いたとされています。 電報の技術が日本に導入されてから5年後には、現在のような「どこにでも送れる電報」が誕生しました。電信網が北海道~鹿児島まで全国に挽かれたからです。私たちが小説や映画などでよく見る「ハハキトク スグカエレ」などの電報は、このころに誕生したのです。 現在はメールやLINEなどでのやり取りが一般化していますし、これらが登場する前にも「電話」がありました。しかしそれでもなお電報は、冠婚葬祭のときの祝電あるいは弔電として生き続けています。現在の葬儀においても、「弔電を紹介する時間」がほぼ必ず設けられています。
弔電を送る手順
弔電の歴史を知ったところで、ここからは弔電を送る手順とタイミングについて見ていきましょう。 弔電は、電話もしくはインターネットから申し込めます。 ♦電報の台紙を選ぶ ♦相手の住所・メッセージ内容を指定する ♦相手の元に届けられる という、非常にシンプルな手順で送ることができます。 なお弔電が相手に届くまでの時間は非常に短く、近い距離の場合だと、なんと申し込んでから3時間と経たずに相手の手元に届くことすらあります。「手紙よりもはるかに速く届く」という特徴は令和の現在においても健在で、一刻も速く弔意を伝えたいという人の心強い見方になっています。 またすでに述べたように、「自宅から」「インターネットで」「いつでも申し込める」というのも大きな強みです。「仕事が深夜までかかってしまう」という場合でも、弔電なら問題なく申し込めます。
弔電を送るタイミングは?
弔電を送るタイミングは、「訃報を知ってからすぐ」です。 弔電は、通夜までに相手の手元に届くのが望ましいとされています。すでに何度か述べているように弔電は非常に届くスピードが速く、14時ごろまでに申し込めば当日、それを逃しても翌日には届きます。 通夜は多くの場合、故人が息を引き取った翌日に行われることになりますから(※例外はあります)、訃報を知ってからすぐに送れば、通夜までに問題なくご家族の手元に届くでしょう。 また、通夜までに届けるのが難しい場合は、翌日の葬式・告別式に届くように送れば問題ありません。 弔電を送るタイミングは早ければ早いほど良いといえます。なぜならご家族は、通夜や葬式・告別式の開始前に、届いた弔電のなかからどれを読み上げるかを選ばなければならないからです。この選定作業をスムーズに進められるようにするために、できるだけ速やかに送らなければなりません。
弔電を送る際のマナー
ここからは、弔電を送る際の注意点とマナーについて解説していきます。
弔電を送る場所は原則として「会場」、自宅には送らない
弔電を送る場合は、基本的にはご自宅ではなく、葬儀を行う会場に出すようにしてください。 なぜなら葬儀が行われる日というのは、ご家族はご自宅ではなく葬儀会場に詰めていることが多いからです。自宅にだれもいないこともよくあるため、葬儀会場当てに出すのが望ましいわけです。ちなみに送り先の名前は喪主名が原則ですが、喪主名が分からない場合は故人様のフルネームあるいは「〇〇家御家族様」などのようにして送ります。 差出人の名前は、個人ならば個人名、団体ならば団体名を記すのが基本です。
供物や供花、不祝儀を辞退されている場合でも、弔電は送付して構わない
現在は、「供物・供花・不祝儀辞退」の意向を示して葬儀を行うご家族も増えています。 このような意向が示された場合はこれらを寄せるのは控えなければなりませんが、その場合であっても、弔電ならば送っても構わないとされています。これは、供物・供花・不祝儀が「お返し」を必要とするものであるのに対し、弔電はお返しをしなくても構わないものだからだと思われます。また、供物・供花と違って場所も取りませんから、葬儀会場が小さくなりがちな家族葬であっても、邪魔になることがありません。
弔電ならではの文章の決まり
訃報や法事を知らせる案内のハガキに句読点を入れないように、弔電もまた原則として句読点を入れないで作ります。 これは、「葬儀や法事が滞りなく進むように」という願いを混めているからだとも、そもそも句読点は子どもなどが文章を読みやすくするために打たれるものであったため、句読点を打つことは相手を目下に見ていることになるからだ、とも言われています。 ただ現在はこのあたりの解釈は柔軟になっており、句読点を打った弔電も登場しています。
相手の宗教に合わせた文面にする
人が亡くなったときによく使われる「ご冥福をお祈りします」という表現は、実は仏教の言葉です。 そのため、キリスト教や神道などのほかの宗教、また一部の仏教の宗派の場合は、この言葉は使いません。相手の信仰する宗教に合わせた書き方ができればベストです。 ただ、句読点の解釈同様、このあたりも現在ではそれほど厳密には考えられていません。実際に弔電を扱う企業のキリスト教用の弔電のテンプレートにも、「ご冥福をお祈りします」という表現が見られることもあります。
弔電の文例
弔電は、いわゆる「テンプレート」のなかから表現を選ぶこともできますし、自分で文章を作ることもできます。 テンプレートの例として、「〇〇様のご逝去を悼みまして 心より哀悼の意を表します」「〇〇様のご訃報に接し 謹んでお悔やみ申し上げます」などがあります。 オリジナルの文章で送るのであれば、故人との思い出話などを弔電のなかに盛り込むと喜ばれることでしょう。 たとえば、 「訃報を受けて悲しみで胸がいっぱいです。私が家に行くたびに笑顔で迎えてくれた大好きなおじいちゃんの姿が 今もまぶたの裏に浮かびます。竹から削り出して作ってくれた竹トンボは私の宝物で 今も私の机の上に飾られています」 などのようなかたちです。
まとめ
メールやSNSでの通信が影も形もなかった時代から、長く電報は私たちの生活を支えてきました。 弔電は、今までもこれから先も、弔意を表すための手段であり続けます。 現在はお香やオルゴール、お花などがついた弔電も出てきているので、これらに思いを込めて送るのもよいでしょう。