葬儀のかたちは現在非常に多様化しています。 そのなかで特に注目されるようになったのが、「小さな葬儀」です。お金を掛けずに、こぢんまりと、近しい人だけでお見送りする形態の葬儀は、感染症に対する意識の高まりからも、多くの人に注目されています。 今回はそんな「小さな葬儀」のなかから、「通夜なしの葬儀」について取り上げていきます。
通夜なしの葬儀とは?
一般的な葬儀は、まず1日目の夜に通夜を行い、その翌日2日目の午前~午後の3時ごろまでに葬式・告別式を行う形式をとります。 そしてその葬式・告別式が終わったのちに火葬場に移動し火葬、その後で繰り上げ初七日法要を行い、精進落としで食事を取って解散という流れを取ります。 このような一般的な葬儀とは異なる流れを取るのが、「通夜なしの葬儀」です。 通夜なしの葬儀は、その名前の通り、1日目の通夜を行いません。翌日に火葬と収骨は行うものの、葬式・告別式や繰り上げ初七日法要や精進落としは行わないこともあります(詳しくは次の「通夜なしの葬儀の種類」で解説します)。
通夜なしの葬儀の種類
通夜なしの葬儀の種類は、下記の2つです。 ♦一日葬 通夜は行わないものの、葬式・告別式は行う形式をいいます。 宗教的な儀式を伴うことも多く、繰り上げ初七日法要や精進落としの席を設けることもあります(ただしこの辺りはご家庭によって異なります)。 葬儀ホールを借りて祭壇を作ってお参りをするというかたちを取るのが一般的で、「簡略化された葬儀」ではあるものの、火葬式よりは規模が大きい葬儀となるでしょう。 なお、「一日葬」は単純に「葬儀を何日間で行うか」というくくりなので、「一般弔問客を受け入れて行う一日葬」といったやり方を取ることも可能ではあります。ただこのようなやり方は非常に変則的であるため、ご家族からの強い要望が寄せられない限りは、一日葬は家族葬(ご家族が呼んだ人しか参列しない)の形式を取ることになります。 ♦火葬式 「直葬」とも呼ばれます。 あらゆる葬儀の形態のなかでももっとも簡素な方式で、火葬炉の前でお別れをした後火葬~収骨を行って終わりにします。 ご家族が希望すれば火葬炉の前まで宗教者(ご僧侶など)が来て読経などをしてくれますが、基本的には火葬式は宗教的儀式を含みません。このため、火葬後に行われる繰り上げ初七日法要も省略されるのが一般的です。精進落としの席も基本的には設けません。ただしご家族で、今後の打ち合わせのために食事をすることはあります。もっともその場合の食事は「精進料理」などのようなかたちはとらないのが一般的です。 火葬式は家族が呼んだ人のみが参列する葬儀となります。どれくらいの人数を呼ぶかはご家庭によって異なりますが、一般的に、「一日葬の家族葬」よりも呼ぶ範囲がさらに狭まる可能性が非常に高いといえます。
葬儀形態による違い
一般葬 | 二日間に渡る家族葬 | 一日葬 | 火葬式(直葬) | |
---|---|---|---|---|
通夜 | する | する | しない | しない |
葬式・告別式 | する | する | する | しない |
繰り上げ初七日法要 | する | 原則する | することもあれば、しないこともある | 原則しない |
精進落とし | する | 原則する | することもあれば、しないこともある | 原則しない |
宗教者(僧侶) | 呼ぶ | 呼ぶ | 原則呼ぶ | 一部の特例を除き呼ばない |
一般弔問客 | 受け入れる | 受け入れない | 原則受け入れない | 受け入れない |
通夜なしの葬儀の流れ
通夜なしの葬儀の流れは、一日葬かそれとも火葬式(直葬)かで変わります。また一日葬の場合も、「どこまで行うか」によって変わってきます。 ここでは仮に、 【一日葬】 ♦繰り上げ初七日法要は行う ♦精進落としも行う ♦宗教者を呼ぶ ♦安置場所は自宅、葬儀は葬祭ホールで行う ♦家族葬のかたちにする 【火葬式(直葬)】 ♦もっとも小さい葬儀のかたちにする ♦宗教者は呼ばない ♦安置場所は自宅 として、その流れについて紹介していきます。
一日葬
1.故人様を自宅にお連れし、安置する 2.翌日、自宅から葬祭ホールに移動する 3.葬式・告別式を行う 4.出棺、火葬場に移動する 5.火葬終了を待って収骨を行う 6.葬祭ホールに戻って繰り上げ初七日法要を行う 7.精進落としの席を設ける 8.精進落としが終われば解散
火葬式(直葬)
1.故人様を自宅にお連れし、安置する 2.翌日、自宅から火葬場に移動する 3.火葬炉の前で最後のお別れをする 4火葬終了を待って収骨を行う 5.解散
かかる時間は葬儀の形態によって多少変わってきますが、一日葬は最低でも6時間程度はかかると考えた方がよいでしょう。 対して直葬の場合は、早ければ2時間半~3時間程度で終わります。 なお一日葬でも直葬でも、またそれ以外の葬儀の形態であっても、火葬終了までにかかる時間(45分~2時間程度)は短縮することはできません。
通夜なしの葬儀のメリット・デメリット
通夜なしの葬儀には、メリットもあればデメリットもあります。 それについて解説していきます。
通夜なしの葬儀のメリット
1.体力的な負担が少ない 通夜なしの場合、葬儀にかかる時間が非常に短くなります。そのため健康に不安を抱える人でも少ない負担で参列することができます。 2.ほかの人に気を遣う必要がない 一部の特例を除き、通夜なしの葬儀は家族葬の形態をとります。また、二日間に渡る家族葬よりもさらに小規模な葬儀となるのが一般的であるため、親族や参列者への挨拶まわりを行う必要もありません。気の置けない家族と一緒に、最期の時間をゆっくりと過ごすことができます。 3.費用を抑えられる 葬儀は、大きくなればなるほど、動員されるスタッフの数が多くなれば多くなるほど、費用がかさんでいくものです。 しかし通夜なしの葬儀の場合は必然的に「小さな葬儀」になるため、会場の使用料を大きく抑えられます。また葬儀のスタッフの動員数も減らせるため、費用を抑えた葬儀が可能となります。 4.感染症対策となる 大勢の人が集まることが懸念されるようになり、葬儀のかたちも大きくかわりました。一日葬や火葬式(直葬)にすると、参列者の数を減らすことが可能です。また精進落としの席も行わないようにすれば、「会食による感染症リスク」もほぼゼロにできます。
通夜なしの葬儀のデメリット
1.「声を掛けられたけど、行けなかった人」が出てくる可能性もある 葬式・告別式は土日平日問わずに昼間に行われます。「葬儀の参列のご連絡」よりも優先される予定はそれほど多くはありませんが、「自分しかできない仕事をしている。平日の昼間は働いているのでどうしても行けない。残業はない仕事なので、通夜があれば行けたのに……」という人が出てくる可能性もあります。 2.入ってくる不祝儀が少ない 通夜なしの葬儀は通夜がある葬儀に比べると費用を抑えられる形式ではあります。しかし「通夜をしない」「呼ぶのは家族が声を掛けた人だけ」ということから、参列できる人の数が少なくなり、入ってくる不祝儀の数が少なくなります。 現役時代に多くの人と付き合っていた人やご家族の交友関係が広い場合は、たとえ高くなったとしても通夜ありの葬儀を行った方が経済的な負担を少なくできる場合もあります。入ってきた不祝儀で、かかった費用を補填できるからです。
まとめ
「小さな葬儀」を目指す人にとって、通夜なしの葬儀は選択肢のひとつとなるものです。 ひとえに通夜をしないで、といってもさらにそこから葬儀の形式は分岐するのです。自身にとってより良い形はどの形なのか今一度考えてみましょう。