葬儀のときに不祝儀を包むものとして、「不祝儀袋」があります。 (なお「香典袋」という言い方を用いることもあります。「香典袋」は厳密には仏教用語ですが、ほかの宗教の葬儀でも使われることもあります)。 この不祝儀袋につけられることの多い「水引」に注目して、その意味や本数と色の関係、結び方などについて解説していきます。
水引とは?
冠婚葬祭のときに包む不祝儀・祝儀袋に付けられるものとして、「水引」があります。 この水引の起源ははっきりとは判明していませんが、遣隋使派遣の時代において大陸から持ち帰った品物に紅白の麻の紐が結ばれていたことに端を発しているのではないかという見方があります。 現在の水引には、 ♦この不祝儀・祝儀袋はたしかに未開封であること ♦魔除けの意味 ♦水引は紐を結ぶことから、人と人とをつなげる意味 があると考えられています。 なおここではこれ以降は、特筆すべき事情がない限り、「葬儀のときに用いられる不祝儀袋の水引」について解説していきます。
水引の色や本数の意味
ここからは、水引の色や本数について解説していきます。 【色】 水引には数多くの色があります。しかし葬儀に使われる色は決まっています。 葬儀に使われる水引の色は、黒白あるいは双銀(双白)が基本です。なお黄色と白色を組み合わせた水引は基本的には法要のときに使われるものではありますが、地域によってはこれを葬儀の席の不祝儀に着けていくこともあります。またかつては青白の水引も使われていましたが、現在はほとんど見なくなりました。 なお、法要や法事も基本的にはこれに添いますが、唯一「弔い上げ(この法要をもって、この人の法要は終わりとする、と決めること)」の場合は、弔い上げを行えたことを寿ぎ、紅白のむずび切りの水引を付けることもあります。 【本数】 水引は、いくつかの紐を組み合わせて作られています。そのため、その紐の本数にも意味があるとする説があります。 この説にのっとれば、葬儀のときの水引の本数は4本が基本で、さらに2本や6本のような偶数にするのが望ましい……ということになります。結婚式などに代表される慶事では5本や7本などのように奇数の紐を用いますから、それとは逆の意味を持つ弔事では偶数の紐を用いる、という考え方です。 ただこの考え方に関しては、これが「唯一無二の正解」というわけではありません。 100年以上も水引を手掛けてきた企業のなかには、「偶数の水引は、注文されない限りは作らない。基本的には弔事も慶事も同じように奇数で作っている」としているところもあります。 また現在は、特例を除き、すでに水引が付けられた香典袋を買い求めることになるため、本数を一本いっぽん確認して購入することは難しいかと思われます。そのため、この「本数」に関しては、それほど神経質にならなくてもよいかもしれません。
水引の結び方と向き
水引の結び方についても見ていきましょう。 葬儀に使う水引は、「結び切り」あるいは「あわじ結び(あわび結び)」と呼ばれるものです。 結び切りは「二度と同じことが起きないように」という願いを込めた切り方であり、葬儀や法要、あるいは退院祝いなどに使われます。 「あわじ結び(あわび結び)」は非常にほどけにくいうえに、やや華やかな見た目を持つことから、結婚祝いの祝儀袋などにも付けられています。なお、結び切りと似た性質を持つため、葬儀の席にも使われます。 なお「繰り返してもよい出来事(出産など)」にはちょうちょ結びの水引が使われます。しかし黒白の組み合わせの水引のついたものはきちんと葬儀用の結び方になっていますから、「色」を優先して選ぶ限り、「間違ってちょうちょ結びの水引のものを選んでしまった」という事態には陥りません。 封筒の向きに関しては、「先端が跳ね上がっている方が上」です。水引の先端が出ている上部分には表書き(「御香典」「御玉串料」など)を書き、下半分には不祝儀を渡す人の名前を記します。
水引の無い不祝儀袋の閉じ方は?
ここまで「不祝儀袋に掛けられている水引」について解説してきましたが、実は不祝儀袋のなかには水引が掛けられていないものもあります。 これは主にキリスト教の葬儀に使われるものです。キリスト教の葬儀の場合も不祝儀を持っていくことになるケースが多いのですが、キリスト教用の不祝儀には原則として水引は掛けられていないのです。 このような不祝儀袋の場合は、すなおに封筒にお金を入れるだけで構いません。糊はつけないのが一般的です。なお「紙」で包むタイプの場合は、端の方にお金を置き、紙を折りたたんでお金を包んでいくことになります。 なお上記では「キリスト教の不祝儀袋には、水引が掛けられていない」としましたが、現在の日本で、「水引が掛かっていない、キリスト教用の不祝儀袋」をスーパーなどで探そうとするのはなかなか困難です。その場合は、白い封筒に不祝儀を入れていくかたちで構いません。 また現在の日本においては、「キリスト教の葬儀であっても、水引が掛かっている不祝儀袋を持って行っても構わない」とされています。キリスト教用の不祝儀袋がなく、真っ白の封筒も見つからないということであれば、ほかの宗教・宗派同様、黒白・双白(双銀)の水引が付けられた不祝儀袋を選んでください。 ただし、ハスの花が印刷されているものは避けます。ハスの花は仏教のゴーダマ・シッダールタ(お釈迦様)と関わりが深い植物であるため、これが印刷されている不祝儀袋は仏教用のものだと解釈されるからです。
まとめ
葬儀のときに持参する不祝儀袋に付けられている水引の起源は、はるか昔、飛鳥時代にまでさかのぼることができるといわれています。 その本数については解釈が分かれるところではありますが、それでも水引が令和の時代まで生き残ってきたのは、水引に多くの人が「意味」を見出したからだといえます。 正しい知識を持って、参列する葬儀に合わせた水引のついた不祝儀袋を選ぶようにしましょう。