弔慰金は、企業の従業員や従業員の家族が亡くなられた際、企業側から支給されるお金のことです。 日本の企業では、福利厚生の一環として、弔慰金をはじめとする慶弔金制度を広く採用しています。 しかし、知識として弔慰金の存在は知っていても、いざ従業員や従業員のご家族が亡くなった際に、どのような様式で、どのように包んで渡すのかを知っている人は少ないでしょう。 そもそも、弔慰金というのは、誰が責任をもって渡すもので、どのような様式で封筒に包むものなのでしょうか。 そこで今回は、あまり一般的には知られていない企業における弔慰金の渡し方、とりわけどのように封筒に包み、どのように書いて渡すのかといった具体的な手順について解説していきます。
弔慰金とは
弔慰金とは、企業に勤める従業員、あるいは従業員の家族が亡くなった際に、一時金として支給されるお金のことです。 故人様を「弔い」、ご遺族を「慰める」ためのお金という意味合いを持ちます。 日本の企業では一般的に、冠婚葬祭の際の「慶弔金」を支給するという福利厚生の制度を採用している企業が多くあります。 慶弔金制度とは、慶事(お祝い事)の際や、弔事(葬儀)の際に、会社から一時金として一定数の金銭を支給する制度です。葬儀に限らず、結婚式などの冠婚葬祭の際に支給されます。 弔慰金は、従業員本人やその家族に際して発生した葬儀や諸々の手続き・手配についての負担に対し、一時金を支給することで従業員に対する負担を少しでも軽減する目的で支給されるものです。 一般的には企業が、その企業に雇用されている従業員に対し、支援金として給付します。 なお、葬儀の参列者が献花やお香などの代わりとして故人様にお供えする「香典」とは違い、弔慰金は「故人様の功労に敬意を表し、ご遺族に支給されるもの」です。 そのため、葬儀の前に渡す香典と違い、葬儀後に渡されることが多くなっています。
弔慰金の封筒(不祝儀袋)とは
弔慰金を贈る際には、当然ではありますが普通の封筒を使ってはいけません。 基本的には、葬儀の際に香典を贈る時と同じように、「不祝儀袋(ぶしゅうぎぶくろ)」に入れて渡すのがマナーとなります。
「不祝儀袋」とは
不祝儀袋とは、葬儀・法事などの弔事の際に、故人様へお供えする金品(現金)を入れる封筒を指します。 市販で専用のものが売られており、白無地の中袋を、水引を付けた外袋で包むスタイルになっているのが一般的です。 結婚式の際に渡す「ご祝儀」の反対で、故人様の死という悲しい出来事に際して渡すものであるため、「不祝儀」という名前がついています。 なお、不祝儀袋のことを「香典袋」と呼ぶのが一般的になっていますが、香典はあくまでも仏教用語である点に注意が必要です。 そのため、仏教式の葬儀以外では、香典袋とは呼びません。つまり、不祝儀袋というのは宗教宗派を問わない呼び方ということになります。
弔慰金を入れる封筒の選び方
弔慰金を入れる封筒は、以上のような不祝儀袋を選んでおけばまず間違いありません。 しかし、不祝儀袋を用意できない場合には、白無地の封筒でも大丈夫です。茶色や水色などカラフルな封筒はNGとなりますので注意しましょう。 ただし、白無地の封筒を使う場合でも、現金は中袋に入れて封筒に包み、外側の封筒には水引を付けるのがベストです。
弔慰金の封筒への入れ方
弔慰金を封筒に入れる際には、守らなければならないマナーがあります。 法律で定められたルールがあるというわけではありませんが、弔事の際に渡す弔慰金の場合、マナーを守ることで弔意を示すという意味合いもあるため、マナーは非常に重要です。 弔慰金を封筒に入れるときは、以下のようなポイントを意識して入れる必要があります。
中袋には「目録」を入れる
弔慰金は、香典とは違って故人様のこれまでの会社組織に対する功労に敬意を表して贈るものです。 そのため、現金を包む際にはお金と一緒に「目録」を入れます。 目録とは、弔慰金を贈る証となるもので、弔慰金の金額や、送り主となる会社名(たとえば、故人様が生前勤めていた会社の名前)・部署名・故人様の名前を記したものです。 弔慰金が高額な場合、手渡しではなく振り込みで渡すこともあり得ますが、振り込みで渡す際にはそれこそはっきりとした金額を示すために目録を入れる必要があります。 目録は奉書紙などに記しますが、三つ折りにして包むのが一般的です。
新札を入れない
葬儀の場ではよく「香典に新札を使わない」といわれます。 これは、新札を使ってしまうと、故人様の死を待ち望んで準備していたように思われてしまうからです。 弔事全般に際して渡す金品に新札を使わないというマナーが日本では一般化しているため、ご遺族に渡す弔慰金の場合でも意味合いは同じです。 とはいえ、特に弔慰金という大きなまとまった額となりやすい現金を用意する際には、旧札だけで揃えられないときもあるでしょう。 そうした場合には、香典と同じで新札に折り目をつけてから封筒に入れるのがマナーです。
お札の向きを「表面左側が上」になるよう揃えて入れる
これもまた弔事全般において一般的ですが、お札の向きについて、「表面左側」を上にして揃えて入れるというマナーがあります。 お札には表裏があり、人物の肖像があるほうを表と呼ぶのが一般的ですので、封筒(中袋)を開いた際に表が見えるように入れます。 なお、封筒は縦長なのでお札も縦向きに入れますが、左側、すなわち金額の数字が上に来て、肖像画が下にくるように入れるのがマナーです。
弔慰金の封筒(不祝儀袋)の書き方
弔慰金を入れる封筒、ないしは不祝儀袋には、「表書き」といって、不祝儀に際した袋であることを明示する文言を記すのがマナーです。 表書きは基本的に濃い墨ではなく、故人様の死に際する悲しみで墨が薄くなった、という意味を込め、薄墨で書くことがマナーとされています。 先述の通り、弔慰金を渡す際には白無地の封筒か不祝儀袋を使いますが、香典とは違うものですので「御霊前」や「御香典」といった文言は書かず、「弔慰金」と記しましょう。 なお、弔慰金を振り込みで贈る場合に関しては、表書きを「目録」とする場合もありますが、弔慰金と記しても問題ありません。 また、封筒もしくは不祝儀袋の中に入れる中袋には、旧字体で弔慰金の金額を縦書きで、「金百萬円也」といったように記します。
まとめ
以上、弔慰金とは何かから始まり、弔慰金を入れる封筒の選び方や、書き方・包み方のマナーを解説しました。 弔慰金は、個人ではなかなか渡すものではありませんのであまり縁がないように思われますが、いざ会社から弔慰金を出す場合には、どのように渡すかをしっかり理解しておかねばなりません。 記事で解説したような包み方・書き方などのマナーを守って、スマートに渡せるようにしておくといいでしょう。 なお、弔慰金は金額が大きくなることも多いので、現金ですべて包む場合にはお札が多くなってしまっても大丈夫なように、薄い封筒は避け、厚みやスペースに余裕のある封筒を選ぶ必要がある点も注意しましょう。