葬儀の際には、亡くなった故人様を悼み、遺されたご家族の支えとなるような「お悔やみの言葉」を掛けることがよくあります。 ここではこの「お悔やみの言葉」をキーワードとして、「そもそもお悔やみの言葉とは何か」「お悔やみの言葉の伝え方」「お悔やみの言葉を伝えるタイミング」「お悔やみの言葉の注意点」について解説していきます。
お悔やみの言葉とは
冒頭でも軽く述べましたが、お悔やみの言葉とは、亡くなった方を悼み、遺されたご家族を支えるために掛ける言葉です。 ちなみにこの「お悔やみの言葉」は、宗教・宗派問わずに見られます(※宗教による違いは、最後の「お悔やみの言葉の注意点」で解説します。 お悔やみの言葉は、葬儀の席などでご家族に伝えることになるものです。だれもが傷つき、だれもがデリケートになっている場面だからこそ、そのお心に寄り添い、失礼にならない言葉遣いを選ぶ必要があります。
お悔やみの言葉は短く簡潔に
お悔やみの言葉を伝える際は、短く簡潔に述べる必要があります。 特に、通夜の前や葬儀のときに掛ける場合は、短くまとめるようにした方がよいでしょう。一般葬の場合、ご家族は多くの人から挨拶を受けることになります。また、特に喪主の立場にある人は忙しく、多くのことを決めるために奔走しなければなりません。あまり長々と引き止めてはご迷惑になることを押さえておきましょう。 ただし、ご家族と親しい立場にあり、ご家族が「辛いので話を聞いてほしい」ということで引き止めてきたのであれば、じっくりと話に付き合うようにしましょう。その際には特に丁寧にお悔やみの言葉を伝え、故人様と顔を合わせたり、故人様に直接声を掛けたりしてもよいかもしれません。
お伝えするタイミング
お悔やみの言葉をお伝えするタイミングは、以下の通りです。
1.【親しい人から、ご家族へ】通夜の前
「親族・家族の立場だ」「親族や家族ではないが、故人様やご家族と特に親しい関係にある」「ご家族から直接声を掛けられて、通夜の前にやってきた」などのような場合は、通夜が始まる前に、ご家族の控え室(「親族控え室」「家族控え室」などのようにされているのが一般的です)に伺い、ご家族に直接お悔やみの言葉を伝えるとよいでしょう。またこのときは、故人様が控え室に安置されていることも多いと思われますので、故人様に直接声を掛けるのもよいでしょう。
2.【一般弔問客から、受付へ】通夜式・葬式の前
「ご家族の同僚の立場」「町内会で代表してきた」などのような場合は、直接ご家族と顔を合わせることなく、受付で不祝儀を渡しながら受付係の人にお悔やみの言葉を伝えるやり方を取ることが多いと思われます。 受付係を勤めるのは、ご家族の会社の人であったり、町内会の人であったりすることが多いといえます。場合によって異なりますが、基本的にはご親族・ご家族は受付を務めません。 このため、この「受付で不祝儀を渡すときに掛けるべきお悔やみの言葉」はほかのときに比べてさらに短く、「この度はご愁傷様です。こちら、不祝儀です」などのようにごく簡素にまとめるとよいでしょう。特に大きな一般葬の場合は、受付も忙しくなりますから、シンプルにまとめた方が良いといえます。 ただし受付の横にご家族が立たれていることもあります。この場合も、簡潔に頭を下げて、短くお悔やみの言葉をお伝えするとよいでしょう。なお、ご家族が引き止めてきた場合は、この限りではありません。
3.【一般弔問客および親族から、ご家族へ】通夜式・葬式の途中
一般的にお悔やみの言葉を掛けるタイミングは、1と2です。 ただし通夜式や葬式の最中にも、お悔やみの言葉を掛けるタイミングが来ることもあります。 それは、「焼香などが終わり、自分の席に戻るとき」です。このとき、ご家族席の前で一礼することが多いかと思われますが、その際にお悔やみの言葉を伝えることもあります。 ただ、焼香はある程度「流れ」で順番に行われるものですし、葬儀会場もまた静かなものです。そのため長くお悔やみの言葉を述べることはしないでおきましょう。頭を下げて、「この度は……」などのように、(受付のとき以上に)簡単に伝えるに留めるとよいでしょう。
4.【後日の弔問客から、ご家族へ】後日の弔問
「葬儀があることは知っていたが、入院中で行けなかった」「家族葬ということで、葬儀があったことを後で知った」というような場合は、後日に弔問することになるでしょう。 この場合は、事前にご家族に連絡を取り、日時をしっかり決めてから伺うことになります。 このような特性上、後日の弔問ではある程度長いお悔やみの言葉を伝える可能性が高くなりますし、その後に故人様の思い出話などに移行することも多いかと思われます。 長居をし続けることは避けたいものですが、ご家族が「故人様の思い出話をもっと聞きたい」という姿勢であるのなら、ご家族のお心にそうように動くとよいでしょう。
お悔みの言葉の注意点
最後に、お悔やみの言葉を伝えるときの注意点について解説していきます。
死因を聞かない
死因の詮索は、いかなる場合であってもマナー違反です。特に若い人が亡くなった場合は死因が気になるかもしれませんが、絶対に尋ねてはいけません。
忌み言葉を避ける
日本には「忌み言葉」と呼ばれる文化があります。 たとえば、「死亡した」「生きているとき」などのように、生死を直接イメージさせる言葉は葬儀の席ではマナー違反とされます。 また、「重ね言葉」にも注意です。「またまた」「再三」「重ね重ね」「たびたび」などのように、同じ言葉を重ねることです。これは「不幸事が重なる」に繋がり、葬儀の席ではバッドマナーとされています。 また、当然のことではありますが、「浮かばれない」などのように縁起の悪い言葉は避けましょう。 これらを見ると、「こんな言葉、使うはずがない」と思うかもしれません。しかし、「生きていらしたときには、重ね重ねお世話になりました。私たちの子どものことも可愛がってくださって、クリスマスプレゼントや入学祝いなどをたびたび送ってくださって……」などのように、「内容自体は好ましいのに、忌み言葉を使ってしまう例」は、決して少なくありません。
宗教による違い
「ご冥福をお祈りします」という言葉は、お悔やみの言葉の代表的な言葉です。 しかし実はこれは、どんな宗教のときでも使える言葉、というわけではありません。「ご冥福」は仏教に限って使われる言葉です。さらに、同じ仏教であっても、浄土真宗の場合はこの言葉は使いません。 キリスト教では「神様の御許でどうぞ永遠の安息を得られますように」、神道の場合は「御霊の安らかならんことをお祈りします」などのようなお悔やみの言葉が使われます。 なお、「どの言葉を選んでいいか分からない!」という場合は、「(〇〇様の)安らかな眠りをお祈りします」とすればよいでしょう。この言葉なら、どんな宗教・どんな宗派でも使えます。
まとめ
葬儀においてもっとも大切なのは「心」です。 「マナーを守っているか」を競い合う場所ではありません。そのため、心から出たお悔やみの言葉であるのなら、多少言い回しが間違っていたとしても、失礼にはならないでしょう。 ただ、相手のデリケートな心に寄り添い、より良き言葉を選ぼうと努力することもまた、優しさの表れだといえます。