日本では人が亡くなると、火葬をしてご遺骨を集める「収骨」を行います。 それではこの収骨されたご遺骨は、その後どこに行くのでしょうか?
納骨とは
収骨したご遺骨は、任意のタイミングで「納骨」を行う必要があります。 納骨とは、骨壺に入れたご遺骨をなんらかの方法で弔うことをいいます。なおこの言葉は特にお墓などの「どこか特定の場所に埋めること」を指す言葉として使われることが多いのですが、ここでは海洋葬などの「どこかに撒く」というやり方でも「納骨」としてまとめてお話をしていきます。 さて、このご遺骨には数多くの方法があります。ここではそれぞれの特徴を解説していきます。
お墓
もっとも一般的な納骨方法は、やはり「お墓に入れること」です。 先祖代々のお墓があれば費用はほとんどかかりません。また、どのような世代にも受け入れられやすい方法であるため、親族間でのもめごとが起きるリスクはほとんどないのがメリットです。 ただ一方で、お墓を一から建立しようとなると100万円~200万円程度のお金がかかるというデメリットもあります。特に都心部では高くなりやすいでしょう。またお墓は「管理者」が必要になるという問題点もあります。
納骨堂
ご遺骨を保管する屋内型の施設「納骨堂」にご遺骨を納めるのも、ひとつの方法です。 墓地に埋葬する方法とは異なり、全天候型であるため災害に強いのがメリットです。また多くの場合、納骨堂は交通アクセスの良いところにあり、お参りしやすいのが特徴です。 価格はさまざまで、十数万円で納骨できるところから100万円を超える墓石型のものまであるので、予算や宗教観によって選び分けることもできます。 ただし納骨堂の場合は、「〇時~〇時まで」のように開いている時間が決められています。そしてその時間も、決して長くはありません(9時~17時など)。このため、「いつでも気軽に故人様と対話しにいきたい」と考えている人にはやや不向きかもしれません。また、下記で紹介する方法よりは心理的な抵抗感は少ないものの、「亡くなった後まで狭いスペースに閉じ込めるなんて!」という反対をするご親族が出てくる可能性もあります。
樹木葬
近年注目を浴びている埋葬方法のひとつとして、「樹木葬」があります。 これはお墓など「石」ではなく、木や花などの植物をシンボルとして、その下に眠る形式をいいます。 自然のなかで眠ることができるため、自然を愛する人や自然に帰りたいと考える人に非常に向いています。また、プランにもよりますが、お墓を一から建立する場合に比べて費用が安いというメリットがあります。「手を合わせるところがない」という不満点もでがちではありますが、現在は小さな石碑を置けるようになっているところもあります。 樹木葬は、その性質上、自然災害による壊滅のリスクを否定しきることができません。 また樹木葬での埋葬の場合は、宗教的な意味をもたせられないのが一般的です。そのため宗教への帰属意識の高い人にとっては、不満が残る埋葬方法となるでしょう。
海洋散骨
樹木葬が「木の下で眠る方式」であるのなら、海洋葬は「海の下で眠る方式」だといえます。フェリーなどで海に出て、そこでご遺骨を撒き、埋葬とする……というお別れの形式をいいます。 「母なる海に帰ることができる」ということで、海を愛している人にはぴったりの方法です。また原則としてご遺骨をすべて撒く(※希望すれば分骨というかたちで手元に残すこともできます)という形式を取るため、その後の埋葬箇所のお世話を気にする必要もありません。 散骨にかかる費用も安く、業者に代行してもらうかたちを選べば10万円を切る価格で埋葬することもできます。 ただしこの方法の場合、「シンボル」を持ちません。そのため、後日お参りをしようと思っても、ご遺骨を撒いたまさにその場所にピンポイントで足を運ぶことはできません。 またお参りをするためにも毎回フェリーの手配をしなければならず、そのたびごとに手間とお金がかかります。 加えて海洋葬の場合は、事前に「ご遺骨を砕く」という作業が入るため、心理的な抵抗を抱く人も多いという問題点があります。
宇宙葬
「空にご遺骨を打ち上げて、宇宙・空に埋葬する」というお別れの方法が「宇宙葬」です。 非常にロマンにあふれる埋葬方法であり、憧れる人も多いと推測されるのがこの形式です。 ただこの形式の場合は、すべてのご遺骨を撒くのは困難です。またまだまだ実用化がされているとは言い難い技術であるため、実践している業者もそれほど多くありません。また「宇宙葬」という言葉の捉え方も業者ごとに違ったり、費用がはっきりとしていなかったり……と、不明瞭な部分が多いという難しさもあります。 2023年の段階でも宇宙葬を選ぶことは不可能ではありませんが、この方法を希望するのであれば、下調べが必要です。また業者との丁寧な打ち合わせも必要になるでしょう。
手元供養
「いずれの方法も選ばず、手元でご遺骨を供養していく」という方法を選ぶのも、決して間違ってはいません。 この方法を「手元供養」といいます。骨壺を仏壇などに置いて手を合わせることも「手元供養」ですし、一部のご遺骨をご遺骨ジュエリーにしてアクセサリーとして身に着けるのも「手元供養」だといえるでしょう。 「一人にするのは悲しい、まだまだ一緒にいてほしい」と願う人に向いている形式です。また、現段階ではとりあえずお金がかからないため、「お金のあるときにしっかり埋葬してあげたい」という人には向いています。 ただ、「〇日までに納骨すべし」という法的な決まりはないものの、いずれはなにがしかの埋葬方法を選ぶ必要があります。
納骨の手続き
人が亡くなってから納骨に至るまでの手順は、以下の通りです。
1.死亡診断書の提出~火葬許可証の発行まで
人が亡くなると、医師による診断が行われ、「死亡診断書」が交付されます。 この死亡診断書を役所に持っていき、「火葬許可書」を作ります。市役所が火葬許可書を受け取ったら、今度は市役所から「火葬許可書」が出されます。これによって火葬を行うことができるようになります。 ただしこれらの作業は原則として葬儀会社が代行するため、ご家族が自分たちで行うことはほとんどありません。
2.火葬場関係の手続き
火葬許可書が降りたら、火葬場関係の手続きをします。 火葬場・葬儀を行う会場・宗教者と日程をすり合わせ、火葬を行う日を決めます。なお火葬場は1月1日は休みであると考えて差し支えありませんが、それ以外の休場日は火葬場によって異なります。 このあたりのスケジュール調整も葬儀会社が行うため、それほど問題は起きないでしょう。 火葬が終わると、埋葬許可書が出されます。埋葬許可書は骨壺と一緒に、骨壺を包む袋の中に入れられるのが一般的です。
3.納骨のための手続きを行う
納骨場所を定めたら、その管理者から使用許可書を発行してもらいます。 この使用許可書と埋葬許可書があれば、納骨を行うことができます。 なおこの手続きは、原則として葬儀会社は代行しません。自分たちで行う必要があります。
まとめ
現在は「自分らしい埋葬方法を選びたい」と考える人も増えています。 後悔のない「終の住処選び」をするために、事前に情報を収拾しておくとよいでしょう。終活のときに合わせて考えてみてください。