現在はいろいろな葬儀の形式が存在します。また、その呼び方もさまざまです。 ここでは「お別れ葬」という形式を例に取り、 ♦お別れ葬とは何か ♦通常の葬儀との違い ♦火葬式との違い ♦お別れ葬の平均相場 ♦お別れ葬を安く抑える方法 について解説していきます。
お別れ葬とは?
まず初めに断りを入れておくと、「お別れ葬」という言葉は葬儀の世界ではそれほど積極的に用いられる言葉ではありません。 そのため、その定義づけもさまざまです。「無宗教ではあるけれど、直葬とは異なりゆっくりとお別れを行える方式」と言われることもあれば、「故人様との時間をじっくりとることのできる形式」とされることもあれば、「直葬とイコールである」とされることもあります。 また、「『お別れ会』とする。家族だけでお見送りの葬儀を行った後、後日になってから故人様の友人知人を招いて葬送儀礼を行う」とする考え方もあります。 このうちのどれかが間違っている、あるいはどれかだけが正解であるとは断言できません。 ただここでは、「宗教者を呼ばないで、2日間に分けて行う葬儀=無宗教葬儀」のことを、「お別れ葬」と定義してお話していきます。 ※上記で述べたように、お別れ葬の定義は異なります。そのため、依頼しようとしている葬儀会社が「お別れ葬」という表現を用いていた場合は、「どんなプランか」「何ができて何ができないか」「何が含まれていて、何がオプションか」を必ず確認するようにしてください。
通常の葬儀との違い
お別れ葬と通常の葬儀との一番大きな違いは、「宗教者を呼ばない」という点です。 現在、多くの葬儀は、故人様が信仰していた宗教の宗教者(僧侶、神父/牧師、神職者等)を呼んで、その宗教の宗教観・死生観・葬送の儀礼に基づいて行われます。たとえば仏教では焼香が行われますし、キリスト教では献花が行われますし、神道では玉串奉奠が行われます。 しかしお別れ葬の場合は、このような宗教的な儀式を伴いません。もちろん、「お別れ葬であれば、絶対に焼香/献花/玉串奉奠を行ってはならない」とまではいいませんが、それでも一般的な葬儀とは異なる形式を取ることが多いといえます。 このため、お別れ葬は通常の葬儀に比べてずっと自由度が高くなります。たとえば、「故人様が音楽を愛していたので、故人様の愛していた音楽で送る」として、(本来葬儀の場ではほとんど選ばれることのない)ロックなどを流して送る……ということも可能です。
火葬式との違い
火葬式とは、火葬炉の前でお別れをするプランをいいます。 火葬式は「直葬」とも呼ばれるもので、もっとも簡素な葬儀の形式です。火葬式の場合は、通夜や葬儀・告別式を一切せず、故人様の安置→納棺→火葬→収骨→(多くの場合)解散……という流れをとります。 このため、ここで定義づけた「2日間に渡って行う無宗教の葬儀」である「お別れ葬」とは、かかる日数が異なります。 ただ、「お別れ葬=無宗教の葬儀」とだけ考えた場合、「火葬式でありながら、お別れ葬である」という形式になることもあります。火葬式の多くは宗教的な儀式を伴いませんし(※ただし故人様やご家族が希望された場合は、火葬炉の前でお経などを挙げてもらうこともできます)、お別れ葬も2日間ではなく1日で終わらせることもできないわけではありません。 「小さな葬儀にしたい」という明確な希望がある場合は、きちんと葬儀会社と話し合って決めていくことをおすすめします。
お別れ葬の平均相場
お別れ葬は、その形式上、一般的な葬儀よりもはるかに安く上がります。 ある程度数字にゆらぎはありますが、「宗教者に支払うお布施は、一般的に、葬儀全体の費用のうちの4分の1程度を占める」とされています。一般葬の費用の平均相場は(「求め方に疑問がある」とされることもあるものの)、だいたい200万円程度です。単純計算をすれば、このうちの4分の1、50万円分が差し引かれるわけですから、150万円程度となります。 もっとも、お別れ葬の形式を取る場合、一般葬よりもずっと小さな葬儀になることが多いかと思われます。そのため、実際にかかる金額はもっと低くなることが多いと思われます。特に上で挙げた「火葬式でありながら、お別れ葬である」という形式の場合は、葬儀のなかでももっとも小さなかたちとなりますから、費用が20万円を切ることも珍しくありません。 一方で、「故人様のこだわりで宗教色のない葬儀をするべくお別れ葬を選択したが、故人様は非常に人付き合いが広く、また大きな会社を経営していた」という場合は、お別れ葬であっても数百万円の出費になることもあるでしょう。 下記で紹介する「安く抑える方法」とも関連しますが、葬儀の費用はその規模によって大きく変わります。明確に「〇円までに抑えたい」「故人様が小さな(あるいは大きな)葬儀を望んでいた」などのような場合は、事前に葬儀会社にその旨を伝えてください。
安く抑える方法
宗教者を呼ばないで行うことになるお別れ葬は、同規模の葬儀に比べれば、お布施の費用が必要ない分、金額が抑えられます。 そのお別れ葬をさらに安く抑えようとするのであれば、やはり規模を縮小するのが一番簡単でしょう。葬儀の費用は「規模」によって決定するところが多いため、規模が小さければ小さいほど葬儀にかかる費用は安くなります。たとえば、「お別れ葬でありながら、一般葬」とするよりも、「お別れ葬であり、(少人数の人しか呼ばない)家族葬」にした方が、費用は安くなります。 なお上記では「2日間に渡って行う無宗教の葬儀」を「お別れ葬」としていますが、「お別れ葬であり、一日葬(通夜を行わないもの)である」や、上で挙げた「お別れ葬であり、火葬式である」という形式を取れば、さらに安くなります。ホールや控え室の使用料金が1日分あるいはゼロにすることができるからです。 火葬の後に行われる食事の席をカットすることでも、費用は抑えられます。食事の費用は葬儀費用全体のうちの4分の1程度とされていますから、この会食をカットすれば負担は大きく軽減されます。また、通夜振る舞いも行わないようにすれば、食事の費用はほとんどかからないでしょう。 なお現在は、「費用の削減」だけではなく、感染症予防の観点から食事の席を設けないご家庭も増えています。言うまでもなく新型コロナウイルス(COVID-19)の影響によるものなのですが、このような事情があるため、食事を設けない形式でもそれほど不自然さはないことでしょう。どうしても気になる場合は、お弁当などを持ち帰ってもらう形式にしてもよいかと思われます。この際には、「新型コロナウイルス(COVID-19)の影響もあり……」「このご時世ですから……」と一言添えるとより丁寧です。
まとめ
「お別れ葬」という言葉は、非常に多くの意味を持つ言葉です。 葬儀会社ごとでその定義が異なるため、混乱する人も多いかと思われます。ただ、どの解釈が正解・どの解釈が不正解というわけではありません。葬儀を行おうと考えている葬儀会社に聞けばどんな形式かをきちんと教えてくれるはずですから、まずは確認してみましょう。 なお、「無宗教の葬儀」と位置づける場合は、お布施が発生しない分、費用が非常に安く抑えられるというメリットがあります。