最近では、家族葬や火葬式など、葬儀の形式が多様化しています。 その中でも、お通夜を省略して儀式を一日で完結する一日葬は、「費用や負担を抑えたい」という希望には合いますが、短いお別れの時間やお寺からの許可が得られないといった欠点も存在します。 今回は、一日葬に関する重要なポイントについてご説明いたします。また事前相談についても触れますのでご参考にしてください。
一日葬とは
一日葬とは、通常の葬儀とどのように異なるのか、そして最近増加傾向にある家族葬との違いについて詳しく説明します。 通常のお葬式では、1日目に通夜式を行い、2日目に葬儀式・告別式・火葬を行う二日葬が一般的です。しかし、一日葬では、通夜式を省略し、1日で葬儀式・告別式・火葬の全てを行います。
通夜式が省略される理由
もともと、お通夜は家族や故人様と縁の深い知人などが集まり、故人様を偲びながら最後の夜を共に過ごす場でした。 夜通し枕元にいて、ろうそくと線香を燃やし続けることが一般的でした。 しかし、お通夜の形式は時代とともに変化してきました。最近では、午後6時か7時ごろに始まり、1~2時間ほどで僧侶の読経、焼香、喪主の挨拶などが行われる通夜式が主流となっています。夕方早めに行われる理由としては、昼間に行われる告別式に参列できない人への配慮も含まれています。 お葬式の簡素化の流れに伴い、告別式と似た流れを持つ通夜式を省略した一日葬が増えてきました。これにより、一日で葬儀を済ませることができ、通夜式を省略することが基本となっています。
家族葬との違い
一日葬と似た形式の葬儀として家族葬があります。一日葬と家族葬の違いは、「葬儀の日数」と「参列者の範囲」です。 通常の葬儀は2日かかるのに対し、一日葬は1日で終わります。一方、家族葬は一般の葬儀よりも参列者の範囲(人数)を限定しています。 一日葬は1日で行われる葬儀であり、参列者の数に厳格な制限はありません。小規模な場合もありますし、会社関係者や友人・知人、近所の人などに連絡して参列を依頼することもあります。 一方、家族葬は参列者を広く招待せず、親しい人々だけが参加する葬儀です。ただし、こちらも厳密な定義はありません。参列する人数や誰を招待するかは遺族の判断に委ねられます。家族だけでなく、故人様と親しい友人も招待されることがあります。 家族葬では通常、1日目に通夜、2日目に告別式・火葬を行います。一方、会社関係者や友人・知人、近所の人などを広く招待し、2日間かけて行われる従来の葬儀は一般葬と呼ばれます。
一日葬のメリット
一日葬はお通夜を行わないためにいくつかのメリットがあります。 お葬式にかかる時間が短くなり、遺族や参列者の負担が軽減、費用も抑えられることなどが挙げられます。一日葬のメリットについて、具体的に解説していきます。
お葬式にかかる時間が短くなる
一般的なお葬式では、お通夜、食事、葬儀・告別式、火葬などが2日にわたって行われ、長時間を要します。 これにより、遺族や親族が高齢の場合、負担が増えることがあります。 しかし、一日葬では葬儀・告別式と火葬が1日で終了するため、お葬式のスケジュールを1日分だけ考えれば良くなり、準備の負担も軽減されます。ただし、火葬場の混雑状況によっては、安置が1週間から10日かかる場合もあることに留意する必要があります。
遺族や参列者の負担を軽減
一日葬は火葬までが1日で終了するため、遠方から参列する方でも日帰りで参列できます。 宿泊費や旅費の負担がなくなるだけでなく、宿泊先を探す手間も省けます。そのため、一日葬は遺族だけでなく参列者にとっても利便性が高いと言えます。
費用が抑えられる
一日葬ではお通夜を省略することが一般的です。 通常の葬儀ではお通夜と葬儀・告別式を2日にわたって行うため、式場や料理などの費用も2日分必要です。しかし、一日葬ではお通夜が省略され、葬儀・告別式と火葬を1日で行うため、その分の費用が軽減されます。式場代やお通夜に関連する返礼品や飲食費などの負担が削減されるのです。
一日葬のデメリット
一日葬はさまざまな負担を軽減できる一方で、参列できない方が出る可能性や周囲からの反対、弔問対応の増加といったデメリットも存在します。これから解説していくデメリットにも注意しましょう。
参列できない人が出る
一日葬では、1日で葬儀・告別式が終了するため、故人様とのお別れの時間が十分に取れないというデメリットがあります。 一日葬は通常、朝や昼間に開始されることが多く、仕事や学校がある方は故人様との別れをゆっくりとできない可能性があります。 一方、通常の葬儀・告別式では、2日間のうちどちらかだけ参列することも可能です。これにより、参列できない方がいる場合でも、もう一方の日に参列することができます。 一日葬ではこの柔軟性が制約されるため、参列できない方が出るリスクがあります。 参列予定の方へあらかじめ日程を共有しておき、参列者のスケジュールへの配慮を心がけましょう。
周囲から理解されない可能性がある
一日葬は比較的新しい形式であり、伝統的な葬儀形式を重視する方には理解しにくい場合があります。 従来の日本のお葬式では、お通夜と葬儀・告別式をセットで行うことが一般的です。そのため、菩提寺や親族、参列者から一日葬に対して反対意見が出る可能性があります。 一日葬を選ぶ場合は、後々のトラブルを避けるためにも、遺族や親族がよく話し合って決定することが重要です。
葬儀後に弔問客が訪れる
一日葬では通常の葬儀・告別式よりも日数が限られているため、参列できる方も制限されます。 そのため、後から亡くなったことを知った方が弔問のために自宅を訪れたいと希望することも考えられます。弔問の対応は遺族が行う必要があり、葬儀・告別式後の負担となる可能性があります。 必要に応じて弔問を辞退するなどの対応をすることで、弔問者の対応を減らすことも選択肢の一つです。
一日葬にかかる費用
一日葬にかかる費用は、葬儀会社や葬儀の内容によって異なります。また、地域によっても費用相場が異なることがあります。 葬儀に関連する費用は一般的に以下の3つに分けられます。 ♦葬儀一式にかかる費用 ♦宗教者への謝礼 ♦飲食接待費 通常、一日葬の場合は葬儀会社に依頼することが一般的です。葬儀会社は、ご逝去から火葬までの一連の手続きやサービスを提供します。以上の3つの費用について、順に説明していきます。
葬儀一式にかかる費用
一日葬では一般的に以下の項目が含まれます。 ♦霊柩車や寝台車:亡くなった場所からご遺体を安置場所まで搬送するための車両の費用 ♦納棺用品:ご遺体を保全するためのドライアイスや仏衣などの費用 ♦式場使用料:葬儀・告別式を行うための会場の使用料 ♦祭壇や遺影写真、骨壺などの費用 一日葬において、これらの費用を合計すると、一般的には50万円から70万円程度が相場とされています。 ただし、この金額は葬儀会社が設定する一日葬プランの料金の目安です。さらに、祭壇に使用するお花を豪華にするなど、追加のオプションを選ぶと追加料金が発生する場合もあります。
宗教者に対する謝礼
どの宗教であっても、宗教者を葬儀に招く場合は謝礼が必要です。 この謝礼は、直接宗教者に支払われます。仏式の場合、お坊さんに対して読経や戒名に対するお礼としてお布施を渡すことが一般的です。ただし、最近増えている無宗教葬では、宗教者に対する謝礼は必要ない場合が多いです。
飲食接待費
精進料理などの飲食費や、返礼品(会葬品)、香典返し、会葬礼状などです。 香典を辞退する場合、香典返しは必要ありません。通夜の振る舞いもないため、会食にかかる費用も削減できます。また、公営の火葬場を利用する場合は、別途火葬料金が必要です。 火葬場に併設された斎場(葬儀場)を使用する場合は、式場の利用料も合わせて支払うことになります。 お葬式全体の費用としては、葬儀一式に支払う費用に加えて、お布施や飲食接待費も必要となることを覚えておきましょう。これらの費用は、主に葬儀会社に支払われます。
一日葬に向いているのはどんな人?
先述した通り、一日葬にはメリットとデメリットがあります。 両者を比較検討し、一日葬を選ぶかどうかを判断する必要があります。以下のような場合には、一日葬が比較的適していると考えられますので、検討の際に参考にしてください。
参列者が高齢者や遠方に住んでいる場合
近年、高齢化に伴い、故人様だけでなく喪主や遺族、そして参列者自身も高齢化が進んでいます。 一日葬は葬儀を1日で完結させるため、遺族だけでなく参列者の負担も軽減できます。高齢者や遠方から参列する人が多い場合、一日葬は適した葬儀の形式と言えます。 ただし、参列者の地域によっては、葬儀場までの移動に時間がかかる場合もあります。早朝に出発して葬儀に参列し、その後帰宅すると夜遅くなるかもしれません。そのような場合には、宿泊施設の手配など配慮が必要です。
葬儀費用を少しでも節約したい場合
一日葬は葬儀を2日間かける代わりに1日で行うため、飲食費や返礼品などの費用をかなり削減できます。 費用の面では、一日葬の方が家族葬よりもわずかに抑えることができる傾向にあります。多くの葬儀会社のプランでは、一日葬の方が家族葬よりも経済的です。 ただし、式場の利用料に関しては、前日から設営やご遺体の安置が必要となるため、一部の葬儀式場では2日分の料金がかかる場合があります。そのため、事前に葬儀会社の担当者とよく相談し、料金について確認することが重要です。 さらに、費用を抑えたい場合には直葬(火葬式)も考慮できます。直葬は通夜式や告別式などの儀式を省き、ごく身内だけで故人様を見送る葬儀形式です。お坊さんによる読経は出棺の際や火葬の直前に火葬炉の前で行われます。式場が不要となるため、大幅な費用削減が可能です。
一日葬で後悔しないために
一日葬を選んで後悔しないためには、いくつかのポイントに注意する必要があります。
葬儀・告別式に呼ぶ人を事前に決めておく
一日葬は葬儀・告別式から火葬までを1日で行うため、時間が制約されることがあります。 そのため、事前に呼ぶ人を話し合っておくことが重要です。参列者の目安をつけることで、判断が容易になります。遠方に住む人や高齢の人など、故人様に関わった特別な人々も考慮する必要があるかもしれません。 また、当日参列できない人が弔問に来る可能性もありますので、事前に呼ぶ人を決めておくことで、弔問対応の目安を把握することもできます。
菩提寺や親族に一日葬に対応できるかを確認
一日葬は新しい形式であり、本来の形式を重んじる菩提寺によっては受け入れてもらえない場合があります。 このような場合、関係がこじれると供養や納骨をしてもらえなくなることもありますので、事前に必ず菩提寺に「一日葬に対応できるか」を確認しておくことが重要です。 また、菩提寺だけでなく、家族や親族とも一日葬についてしっかり話し合っておくことも大切です。新しい形式であるため、話し合わずに一日葬を行うと、トラブルの原因になる可能性がありますので注意が必要です。
弔問対応の準備をしておく
一日葬は家族のみで行われる場合が多く、参列者の人数が限られることがあります。 しかし、亡くなったことを後から知り、弔問に来たいと希望する人もいるでしょう。参列者が少ない代わりに、後日の弔問対応に追われることがあるため、注意が必要です。 一日葬を選んだにもかかわらず、負担が大きくなってしまうことを避けるために、参列者の目安をつけた後に親族と話し合い、事前に弔問対応の準備をしておくことをおすすめします。
葬儀のプロに依頼・相談しよう
時間に余裕があることは、心にも余裕をもたらすものです。 一日葬を後悔することなく過ごすためには、葬儀のプロに依頼したり相談したりすることがおすすめです。いつ相談すればいいか葬儀の事前相談のタイミングについてご紹介します。葬儀の事前相談は3つのタイミングがあります。 1,ご自身の葬儀に備えて予約することです。最近では、終活の動きが広まり、自身が亡くなった後に家族に負担をかけたくないと考える方が増えています。そのため、自身で葬儀を予約する方も増えています。 2,親族の方が余命を宣告された時です。余命宣告を受けた時点で、事前相談をする方も多いです。 3,故人様が亡くなった後です。故人様の亡くなる前に葬儀の準備をしていなかった場合、故人様が亡くなった後に相談に来る方が多いです。この場合、時間的制約があるため、事前相談のメリットは少なくなってしまいますが、それでも事前相談を行うことで、故人様や親族の意思に沿った葬儀を実現することができます。なるべく早めに相談することをおすすめします。 「おくりびとのお葬式」では一日葬だけでなく、一般葬、家族葬、火葬式などさまざまな葬儀の事前相談を無料で行っております。葬儀に関してご心配な方はお気軽に弊社へご相談ください。
まとめ
いかがでしたでしょうか? 一日葬はお通夜を省略し、一日で葬儀が行われるため、費用や体力の負担を軽減することができます。しかし、お寺との関わり方にはマナーを守る必要があります。それを怠ると、大きなトラブルに発展する可能性もあります。 今回お伝えした注意点を心に留めながら、故人様を心からお見送りしましょう。