人の死はとても大きなことであり、それにもかかわらず予期せず起こるものなので、いざ身内の死に直面してから慌てて用意するということが少なくありません。 いざ亡くなってから諸々の確認や葬儀の手配を行おうとすると非常に大変ですが、そうした混乱が起きないようにする方法があります。それが、葬儀の「生前予約」です。 葬儀の生前予約をすることで、故人様本人の希望も取り入れることができますし、費用も事前に用意できるので、いざという時に慌てることもありません。しかし、生前予約はまだまだ浸透しておらず、手続きの方法もよく知らない方も多いでしょう。 そこで今回は、葬儀の生前予約にフォーカスを当て、生前予約の定義や流れといった基本的なところから、生前予約のメリットや注意点についても解説していきます。
生前予約とは
葬儀の生前予約とは、文字通り故人様がまだ存命のうちに葬儀の予約をしておくことを言います。 基本的には葬儀社も緊急の訃報に対してできる限りの対応を迅速に行なってくれますので、死後に葬儀の手配をするのが一般的となっていますが、生前に葬儀の手配をすることができるならそれが一番と考えたことはないでしょうか。その方法こそが生前予約なのです。 葬儀を亡くなる前に手配しておくことで、いざという時に慌てずに済むことはもちろんとして、生前予約であれば、葬儀の手配や詳細な内容を、故人様本人も交えて決めることができます。
葬儀の生前予約はあくまでも「葬儀社や内容を予約する」こと
とはいえ、「葬儀がいつ出るかなんてわからないじゃないか」と思われる方も多いのではないでしょうか。 ご安心ください、葬儀の生前予約においては当然、葬儀の予期などできないことは織り込み済みです。「○月○日に葬儀を出してくれ」という予約は最初からできません。 あくまでも生前予約とは、葬儀が出る際には予約先の葬儀社に任せることや、葬儀の大まかな参列人数、宗教宗派をはじめとした葬儀の具体的な内容といったことだけを予約するシステムなのです。 葬儀の生前予約の具体的な意味合いについては以下の記事も参照ください。
おくりびとのコラム
葬儀の生前予約について。今から始められる終活の一つの形。
葬儀の生前予約の流れ
葬儀の生前予約は、どのような流れで行うのでしょうか。 ここでは、一般的な生前予約の流れを簡単に追っていきましょう。
①葬儀社を指定する
まずは、生前予約をする葬儀社を決めます。 葬儀社を決める際には、家から近いかどうかも大切ですが、近隣にいくつか葬儀社がある場合には、葬儀社の公式サイトなどで費用やサービスについての情報を得て、そうした情報を参考にして比較検討するのが最も合理的です。口コミや評判が把握できるならそうしたリアルな情報も参考にしましょう。説明会を行っている場合もありますので、そうした場に足を運んで検討してみるのもいいかもしれません。
②葬儀の内容・参列人数などを打ち合わせする
葬儀社を決めたら、担当者に連絡を入れ、生前予約希望の旨を伝えましょう。 できれば故人様ご本人が同席の上で事前打ち合わせを行い、葬儀の詳細な内容を詰めていきます。例えば、葬儀を執り行う宗教や宗派、大まかな参列人数の規模とそれに合った会場決めといった基本的なことをまず決めます。 その後、具体的な葬儀の形式を決めます。現在葬儀の形式は多様化しているので、家族と故人様が納得のいく形での葬儀を生前から決めておくことは非常に大切です。
③見積もりを出し、生前予約を行う
打ち合わせが終わったら、打ち合わせの内容をもとに見積もりを出してもらいましょう。 その見積もりに納得がいく場合に、予約の決定を交わします。 この際、葬儀費用をとりあえず据え置いて契約金(頭金)だけを支払う方法と、葬儀費用を予約の段階で支払ってしまう方法があります。後者の場合は「生前契約」とも呼びます。
④故人様となる方が危篤時、或いは死後に葬儀社へ連絡をする
本人が亡くなるか、あるいは危篤になったタイミングで、予約先の葬儀社に電話連絡をします。 ご家族に精神的余裕があれば、危篤時点であらかじめ連絡をしておくといいかもしれません。 タイミングが厳密には予想できない人の死が関わる以上、生前予約の場合は予約日から月日が長く経過してしまっていることもありえます。しかし臆することなく連絡をしましょう。むしろ早めに連絡をしておいた方が、葬儀社としても予約内容の確認や予約事項の共有など手配がスムーズに進みます。
⑤葬儀を実施する
葬儀社との間で生前予約しておいた内容に従って葬儀を実施します。 しかし、当時とは状況が変わっていることもあり得ますので、実施前に改めて再度葬儀社の担当者と打ち合わせをして、最終的な正式な葬儀内容を決定することになるでしょう。双方問題ないことが確認できたら打ち合わせ通りの内容で葬儀を執り行います。
⑥事後支払いの場合は葬儀後に精算を済ませる
支払いのタイミングはそれぞれですが、葬儀後の支払いの場合は、葬儀後にまとめて精算を行います。 もし生前予約の時点で葬儀費用を支払っている場合は、(生前予約の場合はあまり発生しませんが、)もし追加費用が発生した場合にはこのタイミングで精算を行います。
生前予約のメリット
生前予約には、本人が存命のうちに葬儀内容を決められることにより、さまざまなメリットが生まれます。代表的なメリットは以下の通りです。
費用の目安をある程度把握し準備できる
葬儀は一般的に、亡くなってから手配を行いますが、そのタイミングでは葬儀費用よりも葬儀を実施できるかが重視されます。 その結果、混乱や焦りもあり費用面が曖昧になってしまいがちですし、故人様の口座から使うのか別途用立てするのかなどで直前で揉めかねません。 反面、生前予約であれば、存命のうちから費用の内訳を冷静に把握した上で葬儀が行えます。また、費用をどこから支払うかも本人の希望に沿って決められますし、資金も余裕を持って準備できるでしょう。
本人の意志を反映した葬儀内容をじっくりと決められる
生前予約の一番のメリットは、本人がまだ生きているということに尽きるでしょう。 生きている間に本人の希望を最大限取り入れた葬儀内容を固めることができるからです。亡くなられてしまうともう二度とコミュニケーションが取れませんから、可能な限り生前に内容を決めておくと、ご遺族同士で揉めることもなく安心です。
身寄りがなくてもスムーズに葬儀が営める
もしご本人に身寄りがない場合には、より一層生前予約が効果を発揮します。 身寄りがない場合や親族と疎遠である場合、かつ葬儀を取り仕切ってくれるような親しい知人がいない場合は、死後どうなるのかの不安も大きいはずです。 本人が存命中に生前予約をしておくことで、少なくとも葬儀に関しては必要な費用や内容を明らかにした上で実施してもらえますし、葬儀社との話し合いの中で死後の手続き代行や後見人制度など諸制度についても教えてもらえるかもしれません。
生前予約の注意点
いいことづくめに思える生前予約ですが、いくつか注意点もあります。
いざ葬儀を出すタイミングで事情が変わっている場合がある
何度も言うようですが人の死は予期できません。 いざ危篤になりそう、という時でも病状が突然安定してしまうこともありますし、余命を宣告されても余命より数年単位で長生きすることもあります。 そのため、生前予約をしてから葬儀を出すまでに長い年月が経つことも多く、いざ葬儀をあげる時には火葬場の空き状況やご遺族の置かれる状況が変わってしまうことも大いにあり得ます。喪主を務める予定だった人が既に亡くなっているということすらあり得るので、葬儀までにそうした変化が起きてしまうと結局慌ててしまうことになります。
家族の同意を得られない可能性がある
葬儀の生前予約はまだまだ一般的なものではなく、家族の同意を得られない可能性があります。 「生前から葬儀の予約なんて縁起でもない」と眉を顰める方も少なくありません。そのため、生前予約をする際には家族とよく話し合って納得してもらう必要があります。
予約先の葬儀社が倒産するリスクがある
あってはならないことですが、予約していた葬儀社が倒産することもあり得ない話ではありません。 特に生前予約ではなく生前契約の場合、予約時点で葬儀費用を払ってしまっていますから、倒産されるとそのお金が丸々無駄になりますし、確実に回収できるかもわかりません。
まとめ
以上、葬儀の生前予約にフォーカスを当て、生前予約とはどういったものなのか、生前予約のメリットや注意点を通して詳しく見ていきました。 生前予約は、本人が存命のうちに先手先手で準備を整えられることが一番のメリットです。故人様にとって最も納得のいく葬儀にしたいなら、生前予約が最も安心できます。