時代の変化に沿って、葬式も変化していく中、近年新たな葬式の形として「一日葬」が徐々に普及しつつあります。 1日ですべての儀式を終えられる一日葬ですが、通常の葬式とは勝手が違うこともあって、服装や対応のマナーやルールなども違うのではないかと心配している方も多いでしょう。 結論から言えば、一日葬が通常の葬式と違うのは時間の長さだけで、その他は通常の葬式とあまり変わりありません。とはいえ、通常の葬式とは違う点も勿論ありますし、流れも把握していないと勝手もわからないはずです。 そこで今回は、一日葬の流れや、参列者の服装や対応のマナーについて解説していきます。この記事で従来の葬式のマナーを改めて振り返りながら、一日葬独自の流れを把握することで、一日葬を実施する際も、参列する際にも安心してそつなく振る舞うことができるでしょう。
一日葬とは
一日葬とは、従来の葬式を簡略化することで、必要な儀式を一日で終わらせる形式の葬式のことです。 一般的に日本の葬式は仏式で行いますが、通常の仏式の葬式は2日間かけて行われることから「二日葬」とも呼びます。一日葬は、名前の通り本来二日葬である葬式を1日に短縮することで、参列者や喪主をはじめとする家族親族の金銭的・体力的な負担を軽減する目的で始まりました。 親族家族が1つの地域に固まって住むことが減り、それぞれ地域もバラバラで暮らすようになった現代日本では、それぞれの生活を維持するために何かと忙しいものです。もし葬式に参列することになったら、忌引きの申請こそ通りやすいとはいえスケジュール調整の負担も大変なものですし、金銭的にも体力的にも、2日間かけて葬式を行うことは時代に見合わなくなってきています。 そうした事情もあって、葬式を短縮・簡略化した一日葬を選ぶ人が徐々に増えてきているのです。
一日葬の流れ
一日葬の通常の葬式との違いは、通常の葬式では1日目の夜に行われる「通夜」が省略されていることです。また、火葬後の精進落としも、一日葬では省略されることが多く、その点も大きな違いとなります。それ以外は、実は通常の葬式とはあまり変わりません。 簡単に箇条書きにすると、一日葬の流れは以下の通りです。 ● 遺体搬送と安置 ● 葬儀の打ち合わせ ● 納棺 ● 葬儀と告別式 ● 繰り上げ法要 ● 出棺と火葬 ● 収骨(骨上げ) それぞれ、簡単に説明していきましょう。
◆遺体搬送と安置
まずは、故人様のご遺体を自宅ないしは葬儀社の管理する安置施設など指定の場所に搬送します。 ただちに葬儀や火葬を行わないのは、「(一部指定感染症での死亡を除き)遺体は24時間以内には火葬することができない」と法律で定められているためで、少なくとも息を引き取った後24時間以上は、遺体を保存しておかないといけません。
◆打ち合わせ
葬式を行う前に、葬儀社との打ち合わせを行います。葬式の日程や形式、斎場の確認、受付や僧侶の手配、葬儀・告別式の流れの確認、必要な費用の確認や手続きなど、葬式に必要なあらゆることを打ち合わせます。
◆納棺
一日葬では通夜を行いませんが、一般的には前日に納棺を行います。キリスト教式では、神父が棺の中に生花を添える納棺式を行う場合もあります。一日葬では通夜式を行わないため、参列者もいませんから、家族は故人様との最後の時間をゆっくり過ごす機会を持つことが可能です。ただし、当日の朝、葬儀・告別式の直前に納棺を行う場合もあります。
◆葬儀と告別式
葬儀と告別式の式次第は、一日葬であっても一般的な葬式と変わりません。仏式では葬儀式と告別式は区別なく一連の流れとして行われるのが一般的となっていますが、キリスト教式では、葬儀ミサと告別式は儀式としてしっかり区別して行います。
◆繰り上げ(繰り込み)法要
現代では、葬式と別の日にまた家族親族参列者が集まることが困難であることから、一日葬でも一般的な葬式でも、告別式の後か火葬の後に初七日法要を行うことが一般的となっています。この、葬式当日に行う初七日法要は、告別式の後に行う場合は「繰り込み法要」、火葬の後に行う場合は「繰り上げ法要」と呼ばれます。 キリスト教式では、同様の儀式として「追悼ミサ」「記念式」がありますが、葬儀当日には行いません。
◆出棺と火葬
告別式が終わると、喪主挨拶を経て出棺~火葬の流れとなる点も、一般的な葬式と変わりありません。出棺式が行われ、遺体は火葬場へ運ばれます。火葬場には家族親族のみが参列する場合が多いです。簡単なお別れの挨拶と儀式ののち、遺体は火葬されます。
◆収骨(骨上げ)
火葬が終わって骨だけになった遺体から、家族が二人一組になって遺骨を箸で拾い上げ(箸渡し)、骨壺に入れるという儀式を行います。なお、キリスト教式では箸渡しは行わず、家族一人一人がそれぞれに骨を箸で拾い、骨壺に収めていきます。
一日葬の場合の参列者の服装マナー
結論から申し上げますと、一日葬の場合の参列者の服装マナーは一般的な葬式と変わりありません。いくら簡略化されているといっても、葬式は葬式ですから、礼節を欠くような服装はNGです。なお、キリスト教式でも仏式でも参列者の服装マナーは変わりません。男性の場合、女性の場合それぞれ簡単に説明します。
◆男性の場合
男性の場合は、「準喪服」と呼ばれる葬儀用のブラックスーツを着るのが一般的です。ただし、黒色のスーツであればどれでもいいというわけではなく、ビジネススーツはNGとなります。ブラックスーツとスラックスは、葬儀用のものを着用しましょう。 ジャケットの下は白く無地のシャツを着用し、黒いネクタイを締めます。ネクタイピンをつける必要はありません。靴もなるべく装飾のない黒色の革靴を履くのがマナーです。
◆女性の場合
女性の場合も、ビジネススーツはNGとなります。女性のブラックフォーマルは黒のワンピースが一般的ですが、スーツを着るのであれば葬儀用のものを選ぶのが適切とされます。 靴は黒で光沢のない無地のパンプスが無難です。ピンヒールやスタックヒールなどカジュアルなものではなく、3cm~5cm程度のミドルヒールのパンプスがいいでしょう。 アクセサリーは真珠のネックレスやイヤリング、結婚指輪以外は着用せず、化粧もラメや光沢のあるコスメは避けるなど華美な印象に鳴らないよう配慮します。 なお、中高生の参列者は男女ともに、学校指定の制服があればそれが正式な礼服となるので制服で参列します。小学生以下の場合や学校指定の制服がない学校の場合は、大人と同じくブラックフォーマルで統一します。 葬式参列の際の服装や持ち物のマナーに関しての詳細は、以下の記事を参照ください。
おくりびとのコラム
お葬式にはマナーあり!お通夜や葬儀に最適な持ち物・服装を紹介
一日葬の場合の参列時の対応マナー
一日葬の場合の参列時の対応マナーも、一般的な葬式と変わりありません。 参列時に行うこととしては、「芳名帳への記入」「香典を渡す」「焼香をあげる」といったことがあります。キリスト教式では、焼香ではなく献花を行うのが一般的です。 芳名帳の記入は、受付に用意されている芳名帳のフォーマットに従い、わかりやすく丁寧に記入しましょう。キリスト教式の場合、死は悲しいことではないため、お悔やみの言葉は必要ありません。 香典辞退の申し出があった場合を除き、一日葬であっても、香典は用意しましょう。香典袋の水引や袱紗にもマナーがありますが、市販のものを買えば大丈夫です。キリスト教式では水引は不要で、「お花料」といったような表書きをします。 焼香をあげる際や献花の際は、前後に遺族に合掌と一礼を欠かさないようにしましょう。 葬式への参列の際のマナーの詳細については、以下の記事もご参照ください。
まとめ
以上、一日葬の流れや、一日葬の場合の参列者の服装や対応のマナーについて解説しました。 一日葬とはいえ、葬儀式や告別式は正式なものと同じですから、参列する際のマナーも一般的な葬式と変わりありません。 一般的な葬式の常識を把握し、その通りに対応していれば問題ないので、葬儀の直前に改めて適切な服装や対応について整理しておきましょう。