密葬は、ご家族や親しい友人など近しい人たちのみで故人様を見送る形式の葬式のことです。
近年、葬式の多様化が進む中で「家族葬」という似た言葉が急速に普及しましたが、密葬は家族葬とは違い、本葬やお別れ会の開催を前提に開催されるのが大きな特徴です。
密葬は、参列者の種別など一般的な葬式とは異なる点もありますので、案内文や通知状の書き方も変わってきます。密葬の案内文や通知状を送付するにあたって「書き方がわからない」とお悩みの方は多いはずです。
そこで今回は、密葬の際の案内文や通知状の書き方を、作成例・注意点も交えて解説していきます。案内文や通知状とはどういったものなのかなど、基本から立ち返って解説しますので、つつがなく密葬を執り行うためのご参考にしてみてください。
葬式における「案内文」とは、故人様のご親族・友人や、会社・仕事の関係者などに対し、故人様が旅立たれた旨をお知らせするための送付状です。狭義には「訃報」ともいいますが、訃報だけでなく葬儀後に送る案内文もあるため、「案内状」とも呼びます。
案内文は基本的に「葬儀前にお知らせするもの」と「葬儀後に報告するもの(あるいはお礼の意味をこめたもの)」の2種類に大別されます。前者は訃報と葬儀の案内、後者は会葬礼状や葬儀後の報告、法要のご案内といったものが挙げられます。
訃報に関しては以下の記事も参照ください。
密葬は冒頭でも説明した通り、ご遺族やご親族、故人様の親しい友人など限られた人だけが参列する小規模な葬式です。そのため、案内文の内容や案内方法も通常の葬式とは異なりますので注意が必要です。たとえば、以下のような注意点があります。
密葬は参列者を限定して行う葬式のため、当然ながら参列していただく方とそうでない方とで案内文を別々に作成・送付する必要があります。参列していただく方の選定は、故人様の意向を前提とはなるもののご遺族で自由に行えますが、そのぶん、参列していただく方以外の方への送付間違いには注意しなければなりません。
密葬に参列する方以外への案内文は基本的に葬儀後に事後報告という形で送付することが多いですが、直接的な利害関係のある故人様の勤務する会社の方や仕事関係者に対しては、葬儀前に電話あるいは書面で出来る限り早く連絡をしましょう。身内の不幸は急なものですから、可能な時間であれば電話がベストです。休暇の申請が必要な場合は、葬儀の日取りが決まり次第、なるべく早急に一報を入れます。
ここからは、案内文の作成例を、送付するタイミングや送付先ごとに分けて紹介します。
近年は時代の変化もあり、読みやすさを意識して句読点を用いてもいいという傾向もありますが、元々葬儀の場での句読点は「流れを切る」として好まれません。「葬儀が滞りなく流れるように」という験担ぎも込めて、文例からは句読点を省いています。
△△様
田中一郎の長男の光夫でございます
以前より入院していた父 一郎が令和4年〇月〇日午前3時に逝去いたしました
故人に対する生前のご厚誼に深く感謝し 謹んでご通知申し上げます
葬儀は故人の遺志により内々で密葬の形式にて執り行います
△△様にはぜひお越しいただきたくご連絡させていただきました
なお 他の皆様には後程通知いたしますので何卒ご承知おきください
葬儀日程
通夜式 〇月〇日 18時
葬儀式告別式 〇月〇日 11時
葬儀会場 〇〇ホール(住所 電話番号)
仏式
喪主 田中光夫
連絡先 080-〇〇〇〇-〇〇〇〇
令和4年〇月〇日
(住所)
田中 光夫
□□様
田中一郎の長男の光夫でございます
以前より入院していた父 一郎が、令和4年〇月〇日午前3時に息を引き取りました
葬儀は故人の遺志により密葬の形式にて行わせていただきますので
誠に勝手ながらご会葬 ご香典 ご供花はご辞退申し上げます
故人に対する生前のご厚誼に深く感謝し謹んでご通知申し上げます
(住所)
(電話番号)
喪主 田中 光夫
〇〇株式会社
○○課長 △△殿
父 田中一郎 儀 療養中のところ令和4年○月○日に永眠いたしました
ここに生前のご厚誼を深謝し謹んでご通知申し上げます
なお葬儀は故人の遺志により密葬にて執り行いますので
誠に勝手ながらご香典 ご供花 ご供物は固くご辞退申し上げます
(住所)
(電話番号)
喪主 田中 光夫
お世話になっております
〇〇課 田中光夫です
令和4年○月○日に病気治療中の父が他界いたしました
つきましては父の葬儀準備と後始末のため
〇月〇日から〇年〇月〇日までの計〇日間休暇を取得したく存じます
以下ご報告申し上げます
・父 田中一郎 儀 享年○歳
・通夜式 ○月○日
・葬儀式 告別式 ○月○日
・斎場 △△ホール
・喪主 田中 光夫
なお故人の遺志により葬儀は近親者のみで執り行いますため
誠に勝手ながらご厚志につきましては辞退させていただきます
皆さまにはご迷惑をおかけして大変恐縮ではございますが
何卒ご承認いただきますようお願いいたします
拝啓 亡父 田中一郎 儀
葬儀に際しましてご多用中にもかかわらずご会葬賜り
丁重なるご厚志を賜りまして誠に有難く厚く御礼申し上げます
おかげさまで葬儀を滞りなく済ませることができました
生前のご厚誼 ご厚情に親族一同心より感謝申し上げます
なお 四十九日法要につきましては
誠に勝手ながら家族のみで執り行うことといたしました
本来拝趨のうえ御礼申し上げるべきところではありますが
略儀ながら書中を以て御礼申し上げます
敬具
令和4年〇月〇日
(住所)
喪主 田中 光夫
外 親族一同
拝啓 皆様におかれましては変わらずお健やかにお過ごしのことと存じます
このたび左記日程にて(※註 縦書きの場合)亡父 田中一郎 の四十九日忌法要を相営むこととなりました
ご多用の折大変恐縮ではございますが △△様にはぜひともご臨席賜りたくご案内申し上げます
敬具
日時 令和4年〇月〇日
場所 □□寺 東京都北区赤羽〇-〇-〇
電話番号 03-〇〇〇〇-〇〇〇〇
(住所)
田中 光夫
法要の後、□□会館にて粗饗をご用意しております
葬式における「通知状」とは、基本的には葬式の後に、特に前述の案内状を個別に送付しなかった方へ向けて、故人様の訃報や葬儀の報告を知らせるためのものです。故人様が旅立たれた事実や葬式がつつがなく執り行われた事実の報告、生前のご厚誼への感謝の気持ちなどを書面にしたためて簡潔に報告します。
密葬の場合は主に密葬の参列者以外の方へ向けて送付されることが多く、参列者を限定しない本葬やお別れ会が別途行われる場合には、その案内も兼ねる場合があります。
密葬の通知状を作成するときの注意点としては、ただひとつ。「失礼のないようにお詫びを必ず付記する」ことでしょう。
密葬では、多くの場合、通知状=事後報告という形になります。自分が知らない間に故人様が旅立たれて、密葬という形でお別れも済まされたことにショックを受ける方もいらっしゃるかもしれません。とはいえ、密葬はご遺族が故人様を静かに見送る目的で行われるものなので、葬式後まで故人様が旅立たれた事実すらも限られた方にしかお知らせしない場合が多いです。
そうした事情がある以上、ある程度親しい間柄であったとしても、通知状のみで済ませなければならない人はどうしても出てきてしまうものです。参列者以外の方に疎外感を与えないよう、参列者を限定し近親者のみで見送った事実へのお詫びは、必ず通知状の中にしたためましょう。
父 田中一郎 儀 療養中のところ令和4年○月○日に永眠いたしました
ここに生前のご厚誼を深謝し、謹んでご通知申し上げます
なお 勝手ではございますが 葬儀は故人の遺志により近親者のみで密葬にて執り行いました
本来であれば早速申し上げるべきところ ご通知が遅れましたこと 何卒ご容赦いただきたく存じます
また 生前のご厚誼を深謝し心より御礼申し上げます
令和4年〇月〇日
(住所)
(電話番号)
喪主 田中 光夫
家族葬の事後報告につきましては以下の記事も参照ください
以上、密葬の際の案内文や通知状の書き方を、作成例・注意点も交えて解説しました。
密葬は参列者を制限して行う葬式ですし、本葬と分けて開催する場合などには案内の手間も増えます。
不幸は急に訪れるものではありますが、案内状や通知状の作成はできる限り慌てずに、「誰にどんな内容の案内状や通知状を送るのか」は常に確認して、失礼がないよう心掛けましょう。