葬儀の席は、おしゃれさを競うためにあるわけではありません。 しかし故人様を見送り、残されたご家族に弔意を伝える際に失礼にならない程度に、みだしなみを整えることは必要です。そしてある程度年齢を重ねた人にとっては、その「みだしなみ」のなかに「化粧」も含まれます。
葬儀に化粧はしていくべき? 片化粧とは?
「葬儀に参列するときに化粧はしていくべきか、それともしていってはいけないか?」という問いかけへの答えは、「特別な事情がない限りは、ある程度年齢を重ねた女性の場合は化粧をしていくべきである」となります。 「極端に肌が弱くて、医者から化粧を止められている」「顔のけがをして治療中のため、化粧ができない」などのような状況を除き、ノーメイクは失礼にあたると考えてください。 ただし、葬儀の化粧はごく控えめに行わなければなりません。葬儀の化粧は特に「片化粧」と呼ばれることもあるもので、「普段のメイク」とはまったく異なります。片化粧とは「薄化粧であり、かつ口紅をひかない化粧」のことをいいます。「悲しみのあまり、紅をひく気力もありません」という心を表すために口紅をひかなくなったとも伝えられていますが、現在ではこの「口紅」に対する解釈は変わりつつあります(詳しくは後述します)。
葬儀の化粧の具体的なやり方
葬儀の化粧の基本を知ったところで、ここからは ♦葬儀でのベースメイク ♦葬儀でのアイメイク ♦葬儀でのリップメイク ♦葬儀での眉毛メイク に分けて、それぞれ具体的なやり方を見ていきましょう。
葬儀でのベースメイク
基本的には下地+マットな質感のファンデーションを使うのが望ましいとされています。 特にパウダータイプを使うのが理想です。 ただ「現在使っているファンデーションがパウダータイプではない……」という場合は、葬儀のためだけに買い直すのは現実的ではありませんから、いつものファンデーションを使っても構わないでしょう。 プレストパウダーがあればそれを合わせて使用すると、葬儀の化粧にふさわしい落ち着いた印象のベースメイクを作れます。 ※ただしその普段使いのファンデーションにラメなどが入っている場合は、買い直しが求められます。 チークは、原則として使いません。ただ、「もともとの顔色が青白く、チークを使わないと人から心配されるレベルで顔色が悪くなる」という場合は、控えめなピンク色のチークを頬骨のあたりにさっと塗るようにします。
葬儀でのアイメイク
マスカラやつけまつげは使用しません。 マツエクは原則としてNGです。マツエクサロンなどでは「派手でなければつけていっても良い」としているところもありますが、基本的にはマツエクリムーバーなどで落とすことが求められます。 アイシャドウに関しては、ベージュ系やブラウン系の使用が推奨されます。派手な色や発色が良すぎるもの、ラメの入ったものなどは、葬儀の化粧としては不適当なので使いません。 アイラインは原則として使いません。どうしても使いたい場合は、「目を丸く大きく見せること」よりも「切れ長の目元にすること」を意識して、目尻に少しひくだけに留めます。 また葬儀の席では、ウォータープルーフのアイメイクアイテムを使うとより良いでしょう。ウォータープルーフのものならば、泣いても目の周りが黒くなりません。
葬儀でのリップメイク
上でも述べたように、葬儀の化粧には「片化粧」という考え方があるため、口紅は基本的には使用しません。 ただ現在では、「顔色が悪く見えるくらいならば、口紅をひいた方がいいのではないか」という声も聞かれるようになりました。そのため、「原則としては使用を避けるべきだが、顔色などを見て総合的に判断する」と考えておけばよいでしょう。 口紅をひく場合は、ベージュ系の落ち着いた色のものを使用します。真っ赤な口紅やラメの入った口紅は使用禁止です。またグロスも、葬儀の場にはふさわしくないツヤが出てしまうので、使用を避けます。
葬儀での眉毛メイク
眉ペンで眉毛を書くことは、マナー違反にはなりません。 ただし「自然な形にすること」を意識しなければなりません。太すぎるデザインや細すぎるデザインは避けます。髪の毛の色と合わせた色の眉ペンを選んで、柔和な雰囲気に仕上げましょう。
葬儀での身だしなみマナー(髪型や服装など)
葬儀の化粧について知ったところで、最後に「髪型」「服装」についても考えていきましょう。 葬儀の場では、長い髪の毛は結びます。耳の下あたりで1つにくくるとよいでしょう。このときに使うのは、黒や紺、茶のゴムです。またネットつきのバレッタなどでまとめても構いませんが、この場合もゴムと同じように落ち着いた色のものを選びます。なお髪の毛は耳よりも高い位置で結んでしまうと華やかな印象になって慶事をイメージさせるので、注意が必要です。 髪の毛の色に関しては、よほど派手な色でない限りはそのままでも構いません。特に女性の場合は、茶髪くらいならば許容されます。ただし金色や明るい緑色などの目立ちすぎる色をしているのならば、一時的に髪の毛を黒くできるスプレーなどを使用するようにしてください。ただし、もちろん「もともとの地毛がこの色である」という場合は、このような対策は必要ありません。 服装は、家族か親族か参列者かによって異なります。故人様から見て三親等以内の家族・親族ならば正喪服を着られますが、それよりも遠い親族や参列者は準喪服を基本とします。また、参列者の立場であり、かつ通夜の場合は略喪服でも参加できます。 なお子どもの場合は、制服があれば制服を、なければ制服に似た服(ベスト+シャツ+ズボンなど)にします。 正喪服・準喪服・略礼服に関してはこちらの記事からどうぞ▶
おくりびとのコラム
ブラックフォーマルとはどんな服装?葬儀に参列する際の服装マナー
靴は、黒くて光沢のないものを選びます。金具がついているものは避けましょう。また、黒い靴で金具がついていないものだとしても、ピンヒールやサンダル、蛇革を使ったものなどは避けます。なお大人の場合はローファーはNGですが、子どもの場合はこれでも構いません。また子どもの場合は、派手すぎるものでなければ、運動靴も履いていけます。 ストッキングと靴下は黒が無難ですが、参列者でかつ通夜の場合のみベージュ・肌色のストッキングも許容されます。 鞄も靴と靴と同じで、黒くて光沢がなく、金具も付けられていないものを選びます。蛇革などを使ったものを避けるというルールも一緒です。
通夜
正喪服 | 準喪服 | 略喪服 | |
---|---|---|---|
喪主・三親等以内の家族 | 〇 | 〇 | ✕ |
三親等より遠い親族 | ✕ | 〇 | ✕ |
参列者 | ✕ | 〇 | 〇 |
葬式・告別式
正喪服 | 準喪服 | 略喪服 | |
---|---|---|---|
喪主・三親等以内の家族 | 〇 | 〇 | ✕ |
三親等より遠い親族 | ✕ | 〇 | ✕ |
参列者 | ✕ | 〇 | ✕ |
まとめ
葬儀の席の化粧は、「普段の化粧」とはまったく異なります。 あくまで「失礼にならないように行うもの」であって、美しさを競うものではありません。そのため使うべきメイクアップアイテムも、メイクのやり方もいつもとは違うものとなるのです。髪型や服、持ち物のマナーと合わせて、葬儀における化粧のマナーも覚えておくようにしましょう。