故人様の死を悼み、参列者とともに故人様の最期のお見送りをする葬儀。 時代が進むにつれて、葬儀の形は多様化の一途をたどり、従来にはなかった形式の葬儀も増えてきています。中でも最も規模の小さな葬式として「火葬式」があります。 火葬式は文字通り火葬のみを行う葬式のことで、通夜式も告別式も行いません。そのため予算を抑えた葬式として注目されてはいるものの、さすがに告別式もない葬儀に関しては不信感があったり、どういったものなのか不安に感じたりする人も多いのではないでしょうか。 そこで今回は、火葬式とはどういったものなのか、具体的な葬儀の流れや費用相場を解説していきます。火葬式のメリット・デメリットについても見ていくので、葬儀形式の検討にぜひお役立てください。
火葬式とは?
「火葬式」とは、文字通り火葬のみを行う葬儀の形式のことです。 冒頭でも少し説明した通り、通常の葬儀において広く行われている通夜式や告別式も行わないことから、「直葬」とも呼ばれています。
火葬式と「家族葬」との違い
火葬式は、必要な儀式を最大限省略した簡素なスタイルの葬式で、合理性を重視した時代の流れを最も象徴する葬儀形式となっています。 しかし、コロナ禍以降において急激に開催割合を増やし、現在最も高い割合を占める新たな葬儀は「家族葬」です。 家族葬とは、参列者を家族や身内に絞ったスタイルの葬儀を意味します。「家族」という名前がついていますが、必ずしも参列者を家族に絞る必要はなく、生前故人様と親しかった友人知人なども招くことができます。 つまり、より正確に説明するならば「葬儀に招く人を故人様本人の遺志やご遺族の方針によって制限することができる」のが家族葬なのです。しかし制限されるのはあくまでも参列者のみで、儀式の流れや内容は通常の一般的な葬儀と変わりません。そのため、火葬のみを行う火葬式とは、儀式的には大きく異なります。
火葬式と「一日葬」の違い
火葬式と同じように、本来行うべき葬儀を省略した葬儀形式として「一日葬」があります。 一日葬は、本来2日間にわたって行われる葬儀から、1日目の「通夜式」を省略して、必要な儀式を1日にまとめたスタイルの葬儀形式を指す言葉です。通夜式を省略するので、行われる儀式は「納棺の儀」「葬儀式」「告別式」「火葬」の4つとなります。 これに対して火葬式は安置場所で納棺をしたのち火葬場へ出棺し、火葬前に簡単な挨拶を行うだけです。火葬式の場合は、必要な儀式は「火葬」のみといっても過言ではありません。お骨上げは行いますが、精進落としは省略されることが多いです。
火葬式の流れ
火葬式は、上述の通り非常に簡略化された葬儀となります。 そもそも「葬儀式」も含まれないので、葬儀と呼んでいいものか怪しい、と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、最も手間や負担のない合理的な葬儀として一定の支持があるのも確かです。ここでは簡単に、火葬式の流れを見ていきましょう。
1.臨終~搬送・安置
自宅や病院等で故人様が臨終されると、医師による死亡確認ののち、死亡診断書が発行されます。 そして、葬儀社の担当者や遺体搬送業者によって、故人様のご遺体は自宅または葬儀社の安置施設に搬送されます。日本の法律により死後24時間以内は火葬してはいけない決まりになっているので、最低でも1日はそのまま安置されます。
2.納棺および出棺
故人様の遺体に死化粧を施し白装束を着せ、沢山の花や形見の品とともに棺へ入れる儀式を「納棺の儀」といいます。 この儀式は安置場所で行われますが、そのあと何も特別な儀式を行わずに火葬場に向けて出棺されるのが、火葬式の最大の特徴といえるでしょう。
3.火葬場でのお別れ(読経)
火葬場に棺が到着したら、棺の前で簡単なお別れの挨拶をします。 火葬炉前は狭いため、参列は家族や特別親しい方数名に限定されることが多いです。希望によっては、僧侶を招いて読経してもらうこともできます。
4.火葬~お骨上げ
専用の炉を使って、火葬を行います。 火葬には1時間ほどの時間を要するため、その間は休憩室で待っておきます。火葬が終わったら、通常の葬儀の場合と同様に「お骨上げ」(遺族が箸で遺骨を骨壺に入れる儀式)をして終了です。
火葬式の費用相場
火葬式は以上のように非常に簡素な葬儀です。 そのため、従来の一般的な葬儀に比べると費用は非常に安くなっています。葬儀のメインとなる葬儀・告別式も通夜式も行わないうえ、火葬後の精進落としも省略されるというのは非常に大きいようです。 葬儀費用の平均値はおよそ120万円強といわれる中で、火葬式の費用相場は20~30万円程度と平均を大きく下回っています。これに僧侶の読経にかかるお布施を加えても、プラス5万円程度が相場です。
火葬式のメリット・デメリット
火葬式はこのように非常に安い値段で葬儀があげられるなどメリットもある一方で、デメリットもそれなりにあります。 ここでは簡単に、火葬式のメリット・デメリットを箇条書きで紹介していきましょう。
火葬式のメリット
火葬式のメリットは総じていえばとにかく身軽かつ安価に葬儀が行えることです。主なメリットは以下の通りとなります。 ♦費用負担が軽減できる ♦短時間で葬儀を終えられる ♦家族や数人のごく親しい人のみが参列するので応対の手間がない ♦香典返しや食事会なども省略可能
火葬式のデメリット
火葬式のデメリットは、本来の葬儀の意味を削りかねないほど簡素すぎるということでしょうか。 火葬式を認めない宗派もあるなどまだまだ一般に受け入れられているとは言えません。主なデメリットは以下の通りです。 ♦家族や友人知人から理解を得られず不満の声があがる心配がある ♦火葬式を認めない菩提寺も少なくなく、納骨を拒否されることもある ♦参列可能な人数が少ないため、後で弔問の対応をしなければならない可能性もある 火葬式のメリット・デメリットや服装マナーなどについては以下の記事を参照ください。
おくりびとのコラム
葬式をしないで火葬のみは可能?依頼方法や費用相場をご紹介
まとめ
以上、火葬式とは何か、火葬式の流れや費用相場、メリット・デメリットに至るまで網羅的に解説しました。 火葬式は最も多くの儀式を簡略化した合理的な葬儀である一方、簡素すぎるがゆえに菩提寺や参列者の理解を得られず、菩提寺に納骨したい場合に葬儀をやり直さないといけなくなることもあります。 とはいえ、葬儀は人それぞれ方針が違うものです。こうしたメリット・デメリットをしっかり理解したうえで検討してみましょう。