現在の日本は「人生100年時代」と呼ばれるような超高齢化社会となっています。 ライフスタイルの変化に伴い寿命が伸びたことはもちろん、医療技術の発展により病死が減り、天寿を全うするまで生きる高齢者が増えているのです。 病気をせず老いにより亡くなることを「老衰死」といいます。 しかし、病死と違ってフェーズごとの症状のはっきりとした変化はないため、本人にとっても家族にとっても死のタイミングは分かりづらいものです。 それでも、いつかは訪れる死に向けて、本人も家族も準備をしておかなければなりません。 今回は、老衰死とはそもそもどういうものなのか、どのような予兆・前兆が考えられるのかについて解説していきます。 老衰死の前に家族ができることは何なのか、後悔のない最期を迎えるにはどうすればいいのかを考える際に参考にしていただければ幸いです。
老衰死とはどういうものか
老衰死とは、高齢になるに従って起こる「老化」による、さまざまな身体機能の低下を起因として起こる死を意味します。 簡単に言えば、特段大病をせず「老い」そのものが要因となって亡くなることです。 厚生労働省が発行する「令和4年度版死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル」によれば、死因としての老衰とは「高齢者で他に記載すべき死亡の原因がない、いわゆる自然死の場合のみ」と定義されています。 つまり、老衰とは「老いによる自然死」ということになります。
老衰死はなぜ起こるのか
人は老いると身体機能や認知機能が低下します。 例えば歩きづらくなる・体を起こしづらくなる・目が見えづらくなる・耳が聞こえづらくなるといったことです。 こういった目に見える変化だけでなく、内臓機能も徐々に低下し、脳機能や認知機能も低下していきます。 これは私たちの体を構成する細胞の老化が原因となって起こります。 若いうちの細胞は分裂し常に機能を再生しますが、老いるとその再生が行われなくなります。 それによって、老廃物を体外へ排出するための代謝能力が低下し、細胞の機能が低下していくのです。 そして、老化した細胞により周辺細胞の老化も促進されるので、徐々に全身の細胞に老化が波及していき、やがて生命活動維持が困難となることで「老衰死」に至るのです。
老衰死とはどのくらいの年齢で起こるのか
老衰死と具体的な年齢との関係は明らかにはなっていません。 しかし、一般的には男女ともに平均寿命に近くなる80歳あたりから、特段疾患のない自然死の場合に老衰死と診断されることが多くなることは確かです。 厚生労働省の統計(※平成21年)によれば、老衰による死は以下のように、加齢が進むとともに順位が上となっていきます。
年齢 | 死因のうち、「老衰死」の順位 |
---|---|
85歳~89歳 | 5位 |
90歳~94歳 | 5位 |
95歳~99歳 | 3位 |
100歳以上 | 1位 |
老衰死は苦しい?
老衰死は、色々なことが徐々にできなくなっていくので、苦しいのではないかと不安に感じる人も少なくないかもしれません。 しかし、老衰死の場合は大きな病状の急変もないうえ、老化に伴う全身機能の低下とともに感覚機能や脳機能も同時に低下していくので、老衰死の場合は比較的苦しむことなく安らかに亡くなるといわれています。
老衰死前に体と心に起きる予兆・前兆
老衰死には、予兆・前兆があると言われています。 それでは、老衰死前には体と心にどのようなことが起きるのでしょうか。代表的な予兆・前兆は以下の通りです。
体が動かしづらくなる
人は加齢が進むにつれ身体機能・認知機能が低下していきます。 高齢を迎えると、例えば歩いたり階段を登ったりという日常的動作がしにくくなったり、物を飲み込みにくくなったり、目が見えづらくなったりと、これまで当たり前にできていたことができなくなっていきます。 高齢の方が歩きにくくなったり物を持ちにくくなったりすることは、日常でもよくみられる光景でしょう。 体幹も弱まり、腰を常に曲げていないと歩きづらくなるのもこうした機能低下が原因です。耳が聞こえづらい、目が見えづらいといった感覚機能の低下もその1つと言えます。
物を食べなくなる
身体機能の低下は、内臓機能の低下も含みます。 物を噛んだり飲んだりすることがしづらくなるだけでなく、食べ物を消化しづらくなったり、栄養を吸収しづらくなるといったことも起こるのです。 必要な栄養量の絶対数も減少するので食欲も減退していき、段々と物を食べなくなっていきますし、食べてもごく少量の簡単なものしか食べられなくなります。 食べ物を食べなくなると飲み込む力も弱くなるので、徐々にペースト状の食事や流動食に変えていかないといけなくなるでしょう。 なお、栄養が取れなくなると体は死に至るので、延命治療などをしなければ、経口による食事を全くしなくなってから1週間程度で老衰死に至るといわれます。
一日中眠るようになる
身体機能の低下は筋肉や視力の低下だけではなく、脳機能の低下も含みます。 脳機能が低下することで疲れやすくなり、徐々に眠る時間が増え、一日中部屋にこもってずっと眠っているような状態になっていきます。
老衰死前に家族ができること
老衰死の予兆・前兆がご家族に現れた場合、家族には何ができるのでしょうか。 ターミナルケアや葬儀について考えるといった、老衰への準備について解説します。
ターミナルケア
延命治療や対症療法といったことを行う方法もありますが、あくまでも老衰は自然死なので、病気と違って自然のままに任せたいという方も多いはずです。 老衰が進行すると、一日中寝たきりになり、できることも減っていきます。こうした中で大切なのは、できる限り本人に家族が寄り添い安心感を与えたり、好きなものや音楽などをできる限り味合わせてあげることです。 これを、「ターミナルケア(終末期医療)」といい、本人が安らかに逝くことができるよう、最大限生活の質(QOL=クオリティ・オブ・ライフ)を上げた状態にしてあげることをいいます。家族ができるターミナルケアには以下のようなことがあります。 ♦好きな音楽を流す ♦好きな飲み物や水などで口を湿らせる ♦できる限り会話をする ♦手足をさすったり、マッサージしたりする これは全て本人に安心感を与える目的で行います。寝たきりになっても聴覚だけはずっと残っているといわれますので、好きな音楽を流すことや安心できる家族との会話は特に重要です。 なお、物を飲み込めなくなっても、口を湿らせるだけならアイスやかき氷といった甘味でも大丈夫です。
葬儀について話し合う
事前に葬儀の詳細を決めておくことで、いざという時に家族がスムーズに対応でき、精神的な負担を軽減することができます。 例えば、下記のような内容について話しておくことがおすすめです。 希望する葬儀の形式:伝統的な葬儀、家族葬、一日葬など、故人の意向に沿った形式を決めておく。 葬儀費用の準備:事前に費用を把握し、予算を設定しておく。 遺言やエンディングノートの作成:故人の意志を明確にし、家族に伝えておく。 専門葬儀社おくりびとのお葬式では、経験豊富な納棺師が葬儀の事前相談からサポートいたします。
老衰死に向けて後悔のない行動を
老衰が近いことがはっきりすると、どうしても死を意識して悲しい気持ちになってしまいます。 しかし、悲しいからこそ本人とできる限り長く密に寄り添い、向き合ってあげることが、家族にできる最大の役割です。老衰には延命治療などの対処もありますが、もし延命治療をしないなら、遅かれ早かれ近いうちに本人は死に至るでしょう。 いざ臨終の時になったときに後悔しないよう、できる限りの会話をして、本人が安心して旅立てるように生活を整えてあげましょう。 本人の意志を残す目的で残す「エンディングノート」については以下の記事をご参照ください。
おくりびとのコラム
エンディングノートとは?書き方や法的な効力など、エンディングノートのあれこれを解説
まとめ
以上、老衰死とはどういうもので、老衰死の前兆はどういったものか、家族の老衰にはどう向き合えばいいのかといったことにフォーカスして解説しました。 人の死は一方通行で、一度死んでしまえばもう取り返しがつきません。生前に決めなければならないことや、家族間のわだかまりは、できる限り本人が元気なうちに話し合って、解消しておきましょう。 そのうえで、最後まで後悔のないようたくさんの会話をして、先立つ本人を安心させてあげることが大切です。 「おくりびとのお葬式」では、年中無休でお問い合わせを受け付けております。 もし葬儀についてお困りごとやご心配事がございましたら、深夜・早朝問わずお気軽にお問合せください。
「おくりびとのお葬式」で葬儀場をさがす
札幌市・函館市・東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県・大阪府での葬儀を承っております。 以下から葬儀場をお探しいただけます。
お急ぎの方はこちら
お亡くなり後の手続きやお急ぎの葬儀にお悩みの方は下記の番号までお電話ください。