近年では、従来一般的だった葬儀に加えて、一日葬や火葬式といった簡略化された葬儀の普及も進むなど、葬儀の形式は多様化しています。 それに加えて現代では宗教への帰属意識の希薄化から「お寺を呼ばずに葬儀ができないか」と考える人も増えています。 結論から申し上げますと、可能ではあります。しかし、葬儀においてはまだまだ宗教が関わるのが一般的である日本では、あまり理解が進んでいるとはいえません。とはいえ今後、お寺が関わらない葬儀はますます増えていくことが予想されます。 今回は、「お寺を呼ばずに一般葬は可能か」をテーマに、お寺を呼ばずに行う葬儀形式の紹介を行うとともに、そうした無宗教の葬儀に際する注意点も解説していきます。
一般葬とは
一般葬とは、「広く一般に開かれた葬儀」を意味する言葉です。 ご遺族や親族はもとより、故人様の友人や知人、会社の同僚など仕事関係者、隣近所の住民など関係値の多寡を問わず広く参列者を招く従来の葬儀の形式を一般葬と呼びます。 かつて葬儀は地域社会と深く結びついていたため、今でいう一般葬が一般的でした。そのため、特別な故障はありませんでしたが、近年では葬儀の多様化に伴い参列者を親しい身内に限る「家族葬」などの形式が生まれたことで一般葬と呼ばれるようになりました。 一般葬の平均人数や家族葬との違いに関する詳細は以下の記事を参照ください。
おくりびとのコラム
一般葬の平均人数は?制限はある?葬儀の特徴や家族葬との違いを紹介
お寺を呼ばないということ
「無宗教」の人が大半と言われている日本ですが、葬儀の際には宗教、とりわけ仏教が深く関わるのが一般的です。 昔の日本ではお寺に対して近隣住民が帰属する檀家制度が一般社会に浸透していました。現代社会においても葬儀のように「弔う」行為に際して宗教、とりわけ仏教が深く根ざしているのはこれが理由です。 しかし、近年では時代も大きく変わり宗教への帰属意識も低くなったことで、葬儀のスタイルも多様化しています。普段お寺さんにはほとんど関わりがないという方も、今では多いのではないでしょうか。そのような世の中ですから、「お寺を呼ばずに葬儀ができないか」と考えるようになっても不思議ではありません。 お寺を呼ばないということは、宗教における救済を必要としないということでもあります。しかしそれは宗教的思想が前提にあっての考え方で、最初から死後の救済という考え方がない方や宗教を信じない方にとって、そうしたものは最初から不要なのも確かです。 宗教が介在しない葬儀は、昔では「罰当たり」などと言われたかもしれません。しかし近代以降価値観の多様化する現代社会においては「宗教が介在しない葬儀も全然ありである」と考える人も増えています。
無宗教葬の注意点
お寺を呼ばずに行う一般葬を「無宗教葬」といいます。 葬儀においてお寺を呼ばないということは、宗教的な儀式を必要としないということ、すなわち「無宗教」だからです。現代日本においては無宗教の人が多いと言われていますが、葬儀の場においてはまだまだ宗教が深く関わるのが一般的です。無宗教葬には、少数派であるが故に気をつけなければならないポイントがいくつかあります。
親族の理解を得られない可能性がある
上述の通り、葬儀においてお寺を呼ばずに行うことは、日本ではまだまだ少数派です。 世間体を気にする親族がいる場合には、無宗教葬に理解を示さず反対される場合も少なくありません。信心深い人は勿論、宗教を信じていなかったとしても「何となく収まりが悪い」というだけでも周りの人たちが不快に思う可能性があります。
先祖代々のお墓がある場合は事前に菩提寺に相談を
先祖代々のお墓がお寺にある場合、菩提寺に事前に相談する必要があります。 日本ではかつて檀家制度が一般社会に浸透していた関係で、菩提寺がある場合が少なくありません。先祖代々からお墓の管理をしてもらっているという継続的な関係がある菩提寺には、無宗教葬をやる場合には一報入れるのが礼儀です。 また、費用面を大きな理由として無宗教葬を選ぶ場合にも、菩提寺に相談することで費用を抑えてもらえる可能性もあります。後々のトラブルを防ぐ意味合いもありますが、何より相談をした方が結果的に事がスムーズに進む場合が多いので、面倒に思わず菩提寺には事前に相談をしましょう。
まとめ
以上、「お寺を呼ばずに一般葬は可能か」という観点から、お寺を呼ばずに行える葬儀の紹介や注意点を解説しました。 お寺の僧侶や神社の神主、キリスト教の司祭といった宗教者を呼ばずに行う無宗教葬はまだまだ理解が進んでいるわけではありませんが、無宗教を主張する方が増え、宗教への帰属意識が薄れている現代日本では、これから無宗教葬が普及していくことが予想されます。 とはいえ、葬儀において宗教的儀式が重要と考えている人はまだまだ多いです。無宗教葬に興味がある場合、親族や家族、場合によっては菩提寺ともよく話し合って検討してみましょう。